全米選手権で4回転半に挑んだドミトリエフ 「練習では降りた」

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ノンフィクションライター・田村明子
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 テネシー州ナッシュビルで開催された2022年の全米選手権で、アルトゥール・ドミトリエフがクワッドアクセル(4回転半)に挑んだ。

 ショートプログラム(SP)で12位だった彼が、フリーでクワッドアクセルに挑むことはかねて予定されていた。だが彼が跳んだ瞬間に、左前に座っていた記者仲間、元スケーターでもあるジャッキー・ウォンがのけぞって両手を上げたのが目の隅に入った時、これはかなり成功に近い着氷だと確信した。

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 着氷はステップアウトしてダウングレードとされたものの、以前の挑戦よりも確実に進化していた。

 ドミトリエフは、正式には名前の後にジュニアがつく二世スケーターである。同姓同名の父は1992年アルベールビル・オリンピックで金メダル、2年後のリレハンメル・オリンピックで銀メダルを手にした後、新しいパートナーと98年長野オリンピックで再び金メダルを手にするという偉業を成し遂げたペア選手だった。29歳のドミトリエフジュニアは92年9月生まれなので、父が最初の金メダルを手にしたときはすでに母、新体操の世界チャンピオン、タチアナ・ドルチニナのおなかの中にいたことになる。

 「アクセルとループは、子供の時に父に習ったジャンプだったんです」

 ナッシュビルのフリー演技後、アクセルはお気に入りのジャンプなのかと聞くと、ドミトリエフジュニアは「いや、どのジャンプもそれぞれ好き。面白さが違うので」と答えた後、こう続けた。ナッシュビルでは成功しなかったが、彼は4回転ループもプログラムに組み込んでいる。どちらも偉大な父に、幼少時に学んだジャンプだったのだという。

 ドミトリエフジュニアが初めて試合でクワッドアクセルに挑んだのは、2018年ロシア杯でのことだった。正式な記録として、世界初の公式戦での挑戦となる。だが半回転足らずに前向きに降りて転倒し、ダウングレード。彼はこの大会で11位に終わり、それほど注目されることもなかった。

 全米で見せたクワッドアクセルは、この時よりも完成度がかなり上がっていた。回転不足はついたが、ダウングレードはされなかった。(回転不足は4分の1から2分の1の回転不足。ダウングレードは2分の1以上の回転が足りなかった場合の判定)

 これは、今まででもっとも成功に近かった着氷なのだろうか。そう聞くと、驚いたことにドミトリエフジュニアはさらりとこう答えた。

 「練習では降りたことがあり…

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