加藤一二三さん、勝負と信仰を語る 引退直前に神の啓示

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聞き手・西田健作
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 プロ将棋で元名人の加藤一二三・九段は、厳しい勝負の世界に生きるなか、30歳でキリスト教の洗礼を受けました。それから半世紀。加藤さんを支えた信仰について聞きました。77歳で引退したとき、神さまから受け取ったメッセージとは。(聞き手・西田健作

略歴

 かとう・ひふみ 1954年に当時の史上最年少記録となる14歳7カ月で四段に昇段してプロ棋士に。名人位などタイトル獲得は通算8期。2017年6月20日に引退するまで62年、プロの世界で活躍した。一方、1970年に洗礼を受け、信仰生活は50年を超える。86年にはバチカンから「聖シルベストロ教皇騎士団勲章」を授与されている。愛称は「ひふみん」。

 ――「神武以来(じんむこのかた)の天才」といわれ、若い頃から将棋界で活躍してきた加藤さんが、1970年に30歳でキリスト教の洗礼を受けたのはどうしてですか。

 前の年に、大山康晴十段に挑戦して大きなタイトルだった「十段」を取ったのですが、防衛戦で大山名人に負けたんです。そのころから将棋に行き詰まるようになりました。キリスト教の本を読んでいたので、洗礼を受け、神の助けを借りることで、行き詰まった状態から飛躍できると確信したんです。以後、控えめに言っても800回は将棋に勝っています。正確に数えたら850ぐらいかもしれません。

 ――加藤さんは近著「だから私は、神を信じる」(日本キリスト教団出版局)に、対局の前日には長い時間をかけてお祈りをすると書いています。対局前に初めて祈ったのは1972年の米長邦雄さんとのA級順位戦だったそうですね。

 杉並区(東京)のカトリック下井草(しもいぐさ)教会で祈ったんです。そうしたら、明くる日の対局は素晴らしい出来栄えで勝ったんですよ。翌年には、カトリック吉祥寺教会で「ゆるしの秘跡」(自分が犯したことをイエス・キリストの代理人である司祭に告白し、神さまのゆるしを乞う儀式)にあずかって、翌日に有吉道夫さんとA級順位戦で戦ったら素晴らしい将棋を指すことができました。

 ――でも、お祈りするとき、「将棋に勝たせてください」とは決して言わないそうですね。

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