たった一度の空中ブランコ忘れられず サーカス団員目指し6人集まる

茶井祐輝
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 【大阪】いつか、空中ブランコに乗って観客を感動させたい――。そんな夢を抱く人たちを世界で通用するサーカスアーティストに育てようと、サーカス会社がスタッフとして働きながら演技を学ぶことのできる制度をスタートさせた。

 取り組むのは、国内各地を特設テントで巡業してきた「ポップサーカス」(大阪市中央区島之内2丁目)。創業した1996年からこれまでにのべ約1千万人の観客を動員してきた。

 約2年前からコロナ禍の影響で公演を中止しているが、再開すれば会場設営や接客、裏方などで働きながら、設備を使って練習ができるようになる。契約スタッフとして給料を払い、授業料やレッスン料はとらない。

 2019年暮れに募集をかけると全国から約20人の応募があった。その中から、17~32歳の男女6人を選んだ。ほぼ全員がサーカスの技を学ぶのは初めてだ。

 選考で重視したのは「サーカスアーティストになりたいという熱意」(担当者)。公演中は一緒にコンテナハウスで集団生活を送るため、協調性も重視した。

 1月10日、大阪市浪速区の府立体育会館で、初の練習となる合宿があった。参加者はマットの上で側転や後転に挑戦し、講師で中国・大連雑技団出身の張永強さんが技量を確かめていた。

 その様子を見守ったポップサーカスの久保田悟社長は「新型コロナで厳しい時期は続くが、将来的に活躍してくれれば」と期待を込める。

 今後も随時募集し、面接などを経て採用を決める。応募方法はウェブサイト(http://www.pop-circus.co.jp/trainee.html別ウインドウで開きます)。(茶井祐輝)

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 参加者6人は、今春に高校を卒業する2人と、18歳が1人、20代が2人、30代が1人だ。夢を追うため、サーカスの世界に飛び込んだ2人を紹介する。

 参加者の藤田真子さん(20)は兵庫県小野市出身。進学校として知られる県立加古川東高校から、高校卒業資格が得られてサーカスの技が学べる大阪アクロバットアカデミーに編入した。

 中学3年のころ、家族旅行で訪れた北海道のリゾート施設で、空中ブランコを体験した。「重力がなくなって、自由に飛んでいる感覚」にひかれた。

 高校に進んだが、空中ブランコやサーカスへの憧れは消えなかった。全国の大学を調べたが、「サーカスの技を学べる大学はなかった」。編入を決めた。

 卒業後、海外のサーカス学校のオーディションを受けたが、不合格に。今は週5回のレッスンを受けながら、アルバイトをして暮らしている。国内外を行き来しながら、芸を披露するのを夢見ている。

 参加者の藤田和美さんは最年長の32歳。本来は28歳までの募集だが、経験者として採用された。

 元々はポールダンサーだ。東京の小劇場などで披露していた。5年ほど前、ロシア・ウラジオストクであった大会に出た。当時伸び悩んでいて、結果は散々。落ち込んで帰ろうとすると、出場していたフィリピン人の女性が自分の肩をつかんで突然言った。「エアリアルやりなよ」

 エアリアルとは天井からつり下げた布などを使う空中パフォーマンスで、サーカスでも取り入れられている。女性はエアリアル部門の出場者だった。やりとりはそれだけで、なぜそう言われたかは分からない。だが、妙に頭に残った。

 日本に帰ると台湾でエアリアルの大会が開かれると知った。「これに出てみよう。予選で落ちたらエアリアルはやめよう」

 知人に3カ月間レッスンをつけてもらい、映像を送った。

 予選は通過。上位に入らなかったものの、自信になった。それ以来エアリアルを続けている。いまは大阪を拠点にエアリアルのインストラクターをしている。

 今回、サーカスでエアリアルを多くの人に見てもらいたいと思い、育成制度に応募した。「コロナで暗い世の中。見た人を楽しませるパフォーマンスをできれば」と意気込む。