聖職者らによる性的虐待「前教皇が対処怠る」 ドイツで調査報告書
ローマ=大室一也
ドイツのカトリック教会で起きた聖職者らによる性的虐待に関する調査報告書が20日、明らかになり、前ローマ教皇のベネディクト16世(94)が同国南部ミュンヘン司教区の大司教をしていた際、四つの事例で対処を怠ったと指摘された。前教皇は嫌疑を否定しているという。
AP通信などによると、調査は2020年にミュンヘンなどの司教区から委託を受けた地元の法律事務所が実施。1945~2019年の間、少なくとも少年ら497人が被害を受けた。前教皇は大司教だった1977~82年、有罪判決を受けていた聖職者に仕事をさせたり、小児性愛者の聖職者の異動を認めたりしたという。
同通信などに対し、調査した弁護士は「前教皇が対処を怠ったことは非難されうるとの結論に達した」と述べた。一方、ローマ教皇庁(バチカン)の広報官は「報告書を全て読むまでコメントを控える」としている。
前教皇は13年、高齢による力の衰えを理由に約600年ぶりに生前退位した。その後、名誉教皇となり、バチカンで暮らしている。
カトリック教会では聖職者の妻帯が認められていない。アメリカや欧州など各地のカトリック教会でたびたび聖職者による未成年者などへの性的虐待が明らかになっている。(ローマ=大室一也)