「政治家の下請け」になった官僚 根回しばかり奔走、劣化する政策
建設業者の提出データを無断で書き換えていた統計不正問題で、国土交通省が21日、事務次官らを処分した。国の針路の決定に使われる基幹統計の信頼は大きく揺らいだ。不正を生んだ原因はどこにあるのか。再発防止には何が必要か。公共政策と国際政治の専門家に聞いた。
「政策過程の劣化、政治システムの問題」 田中秀明さん(明治大学教授)
――国土交通省の統計不正をどうみますか。
「政府の統計でデータが集まらない場合、統計的な処理で補完することは認められています。しかし、官僚がデータを勝手に書き換えるのはアウトです。2018年に厚生労働省の毎月勤労統計の不正が明らかになり、各省庁の統計が一斉点検された際、国交省は正直に不正を報告するべきでした。隠した結果、事態は悪化しました」
――霞が関で統計不正が起きる原因はどこにあるのですか。
「原因は複合的だと思います。まず、政策を形成する過程や制度改革で、統計データが重視されていません。政府はEBPM(証拠に基づく政策立案)が重要と言っていますが、かけ声だけでしょう。肝心の統計が信用できません」
「人員不足も顕著です。14日に公表された検証委員会の報告書で業務を担う統計室の人員不足が指摘されたのも、統計軽視の姿勢の表れといえます」
――統計が軽視されるのは、なぜでしょうか。
「政策や制度は統計データなどに基づき見直すことが必要ですが、官僚は苦手です。先輩たちを含め、今までの取り組みの間違いや不十分さを暗に認めることになるからです。官僚自身も、自分たちは間違えないという『無謬(むびゅう)性の原則』にとらわれています。政策や制度は本来不完全で、実施しながら見直せばいいのですが、いまの日本社会では許容されないという問題もあります」
――政治の側に問題はないのでしょうか。
「政治家にとっては、次の選…
【視点】自分が官僚になってから20年余り経つが、この間政管関係は本当に大きく変わり、政治主導・官邸主導が強化されてきた。 そのことは、時代の必然であり、かつての各省の枠組みごとに最適解を探す官僚主導には戻れないし、戻るべきとも思わない。政策を