筋肉が効果を10年記憶?「4年処分は不十分か」 スポーツ界混乱も

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ロンドン=遠田寛生
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 頭の中に、はてなマークが浮かび上がった。

 昨年11月末、パリで開催された世界反ドーピング機関(WADA)の理事会を取材した。新型コロナウイルスの感染が広がった2020年3月以降、初めて対面参加が許された理事会だった。

 会議場となったあるホテルの一室には50人ほどが集まり、狭くも感じられた。だが、閉塞(へいそく)感はない。それぞれの心がはずんでいるような空気感だった。

 人によっては1年半以上ぶりの再会だ。休憩中、エスプレッソを片手にチョコレートクロワッサンをほおばりながら盛り上がる理事たちの姿を見て、無理もないなと思った。

 しかし、和やかな雰囲気は一人の発言で一掃された。

 WADAで科学部門を統括するオリビエ・ラバン博士だ。

 ドーピングの取り締まりへ、研究に投資する重要性を説明していた際のことだった。さらりと、こう述べた。

 「筋肉の記憶を利用すれば我々が考えているよりはるかに(大きな)ドーピング効果を得られる可能性がある」

 どういうことなのか。昼休憩中にラバン博士に詳細を尋ねると、気がかりだという仮説を教えてくれた。

 「中、長期間、体を鍛えてきた人がいるとしよう。トレーニングにより筋肉量は増した。その後、数カ月休みをとったが、トレーニングを再開したら筋肉や体の能力は前に鍛えていた状態にすぐに戻った」

 「筋肉が前の状態を覚えてい…

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