第32回5年ぶりの電話で求婚 迫る兄たちの復讐、私が頼った身分違いの彼は

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ジャイプル=奈良部健
【動画】「それでも、あなたを」インド編
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連載「それでも、あなたを」 インド編①

 「私と結婚して」

 20歳のラタ・シンは電話口で、ブラハマナンドに開口一番、言った。2000年11月のことだった。

 「どうした。何があった?」

 ブラハマナンドは驚き、いぶかしんだ。

 なぜなら、2人はそのときも、それ以前にも恋人同士だったことはなかったからだ。同郷出身ではあるが、別の街で暮らし、5年以上も連絡を取っていなかった。

 「ノーやイフはいらない。結婚するかしないか、早く言いなさい」

 ラタはさらに迫った。「わかった」とブラハマナンドは言った。何が起こったのか、ラタは詳しくは話さなかった。

 翌日、ブラハマナンドは首都ニューデリーから列車に乗り、およそ500キロ離れたラタの住んでいるラクナウに着いた。

 宿泊先のホテルに、ラタは来た。普段着である灰色の衣服サルワルカミーズを着たまま、ほぼ手ぶら。家族の誰にも告げずに、自宅から逃げてきたのだった。

 2人はタクシーに乗り、ヒマラヤの山岳部を目指した。

 突然すぎる、逃避行の始まりだった。

武人の娘と商人の男

 2人は、インド北部にあるバルカ村で育った。

 ラタの中学校の同級生の兄が、ブラハマナンドだった。ブラハマナンドは、ラタの家に遊びに行ったこともあった。

 同級生のお兄ちゃんが自宅に遊びに来る。世界の多くの国では普通のことが、ラタの家では極めて限られた人にしか許されなかった。

 それは、インドの社会が「カースト」や「ジャーティ」で分断されているからだ。

 カーストは紀元前から続く身…

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