トヨタ出身の「武闘派」マスオ型跡継ぎ DXで老舗工場を変革

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三浦惇平
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 トヨタ自動車で生産の効率を上げるために積み重ねてきた「カイゼン」。多くのものづくりの現場に広がった一方、その効果を発揮できていないケースも少なくない。車部品老舗の旭鉄工の木村哲也社長(54)は、トヨタで培ったカイゼンの経験に、「DX」(デジタル化による変革)を掛け合わせて工場を進化させた。その秘訣(ひけつ)を聞いた。

 ――カイゼンを進めるために、デジタル技術を活用しました。

 「生産設備の停止時間や生産にかかる時間を、自動で集めるシステムを開発しました。『iXacs(アイザックス)』といいます。生産ラインごとにモニター装置を取り付け、無線通信でデータを集めます。整理されたデータは、スマートフォンやパソコンでどこでも見られます。無駄や非効率的な作業を、人手をかけずに『見える化』できます」

トヨタと同じようにいかない「カイゼン」

 ――工場のDXに取り組んだきっかけは。

 「旭鉄工ではエンジンやブレーキの部品をつくっていますが、生産効率を上げるためにカイゼンを始めました。私自身がトヨタの生産調査部でカイゼンをしてきたので、その経験を生かそうと考えていました。しかし、トヨタと同じようにはできませんでした」

 「たとえば、作業員は生産管理板に時間あたりの生産量や停止時間を記入します。ぴたりと計測することは難しく、記録の時間すらないというのが実態でした。トヨタでは作業する人がたくさんいますが、ここでは1人で10のラインを見るケースもありました」

 ――どのように、解決しましたか。

 「まず、設備の正常と異常を知らせる『シグナルタワー』の信号を読み取り、稼働時間を把握するシステムをつくりました。1時間あたりにラインが止まっている時間がわかります。その原因を分析することで、停止時間を減らせました」

 「しかし、停止時間が減った割に、生産数は増えません。そのため、一つの製品をつくるのにかかる時間を計測できるように、システムを進化させました」

 ――どのような発見がありましたか。

 「一定だと思っていた生産時間に、ばらつきがあることがわかりました。同じ現場でも、作業員によって、時間に差がありました。機械の経年劣化による遅れもありました。こうした遅れはデータがなければ気づきません」

 「人工知能(AI)を使って、大きな停止を防ぐのは格好いいかもしれません。しかしデータを見ると、こうした停止は、そんなにありません。それよりも、短い停止が重なったり、作業時間の遅れが蓄積したりしています。こうした問題をデータから見つけ、『速く作業をしなさい』というのではなく、速く作業ができる環境を整えるように手を打ちます」

成果分からないカイゼンは「罰ゲーム」

 ――現場はどのように変わりましたか。

 「作業時間を計らなくていい…

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