連載「それでも、あなたを」 インド編③(完)
【インド編①】5年ぶりの電話で求婚 迫る兄たちの復讐、私が頼った身分違いの彼は
武人階級のラタは兄たちの名誉殺人から逃れるため、商人階級のブラハマナンドと結婚。兄たちに追われる身になった2人は、裁判で戦います。そんな時、ラタの妊娠が発覚しました。
なぜ、ラタは堕胎しようと思ったのか。
本心では、子どもは産みたかった。でも、自分とブラハマナンドに万が一のことがあれば、子どもは1人で生きていかなければならない。
さらにこの頃、ラタは裁判闘争で心身ともに追い詰められていた。子どもを育て上げる自信がなかった。
自分は生まれてきた子どもに過ちを犯してしまうかもしれない。そんな恐怖もあった。だから、産めない。そう思った。
ブラハマナンドは反対しなかった。ただ、堕胎薬を買ってきてと言われた時ほど、悲しかったことはなかった。
だが苦しむラタがそうしたいというのなら、そうしてあげたいと思った。
堕胎薬を飲んだが……
インドでは、堕胎薬の販売や購入は違法だが、お金を出せば、医師の処方箋(せん)がなくても買える。ブラハマナンドは堕胎薬を買い、ラタに渡した。
ラタはすぐに堕胎薬を飲んだ…