「游明朝」や「ヒラギノ」を生んだ原風景 奥深き書体設計の世界

西田理人
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 書籍のページ、駅名の標識、街中の広告――。現代生活のあらゆる局面で目にする「游明朝(ゆうみんちょう)」や「ヒラギノ」といった書体は、いかにして生まれたのか。開発に携わった書体設計士・鳥海(とりのうみ)修(66)の仕事を紹介する展覧会が、京都市右京区の京都dddギャラリーで開かれている。

 山形県出身の鳥海は、美大卒業後に書体制作販売大手の写研に入社。1989年に独立し、仲間と「字游(じゆう)工房」を立ち上げた。生まれ故郷である鳥海山と庄内平野の風景をイメージした展示空間には、アップル社のMacOSが採用したヒラギノをはじめ、自身が開発に関わった計131の書体が並ぶ。

 パソコンを使ったDTPデザインが広く普及した現在でも、鳥海の文字づくりは鉛筆や筆を使った手書きから始まる。会場では、谷川俊太郎の詩のために制作した仮名書体「朝靄(あさもや)」を例に、コンセプトづくりから完成までを9ステップで解説。向かいの壁には、本や標識など実社会での使用例も並び、個人の身体から生み出された手書き文字が、デジタル上でのアウトライン化などを経て、普遍性を獲得していく過程が見て取れる。

 モダンでベーシックで読みやすい。そんな評価を受ける書体について、鳥海は展覧会に寄せた文章で「(にじみ出る個性を)抑えつつ作り出す書体」が理想だと語る。文化を支える文字は水や空気のごとし。「いつの時代も読みやすい、できれば美しい書体を届けること。それは言わば、情報を伝えるためのインフラなのだと気がついた」

 「鳥海修 もじのうみ:水のような、空気のような活字」展は3月19日まで。日、月、祝日は休館。入場無料。問い合わせは同ギャラリー(075・871・1480)。(西田理人)