コロナ禍、女性の窮状続く 21年自殺者数は高止まり
2021年の自殺者数は、前年より251人少ない2万830人で2年ぶりに減少した。男性が240人(1・7%)減の1万3815人だったのに対し、女性は11人(0・2%)減の7015人。コロナ禍で女性の自殺者数が高水準で推移していることがうかがえる。厚生労働省が21日、速報値を発表した。
人口10万人あたりの自殺者数を示す自殺死亡率は、全国では16・5。性別でみると、男性が22・5、女性は10・8だった。都道府県別では、山梨が23・7で最も高く、青森の23・6、新潟の21・2と続いた。
自殺者数は20年に前年比912人増の2万1081人(確定値)となり、リーマン・ショック直後の09年以来、11年ぶりに増加に転じた。なかでも女性は935人増の7026人(確定値)と急増していた。
学生・生徒は前年上回る
21年の女性の自殺者について、分析可能な1~11月のデータでみると、「学生・生徒等」は前年同期よりも13人多い362人となった。大学生と中学生が上回った。「有職者」は前年同期に比べて51人減ったが、女性全体ではわずかな減少にとどまった。
NPO法人「OVA」は、全国11の自治体と連携してチャットなどで自殺に関するオンライン相談などに応じている。21年度に相談を受け付けた人数は1142人(1月20日時点)。コロナ禍前の19年度は399人だったが、3倍近くまで増えたという。
同NPOの伊藤次郎・代表理事は、20年は有名人の自殺報道の影響もあり、女性の自殺者数が増えたとする見方があるが、21年は状況が異なるとみられるにもかかわらず、減らなかったと指摘。「女性が大きく減らなかったことは深刻。コロナ禍で課題を抱えたままなのでは」とみる。
電話よりも家族に相談内容が漏れづらいメールやチャットなどでの相談が増えており、「先行きの見えないコロナ禍にあって、夫との関係悪化や家庭内暴力に悩む相談が目立つ」と説明する。表に見えにくい家庭内の性暴力の増加も懸念されるという。
「感染防止」理由に滞る人材育成
自殺を防ごうと、自治体などが態勢づくりを進めているが、コロナ禍で影響が出ている。悩みを抱える人に声をかけたり、話を聞いたり、専門家につないだりする「ゲートキーパー」の育成もその一つだ。政府の自殺総合対策大綱で重点施策にもなっているが、オミクロン株の感染拡大で、自治体が養成講座を中止にする例も生じているという。
厚労省の自殺対策の有識者会議のメンバーも務める伊藤さんは「オンラインも活用して人材を育成してほしい。こうした取り組みが自殺に追い込まれる人を少なくすることにつながる」と話す。(久永隆一)
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※2023年3月14日現在
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