経産省、補助金不正の処分直前に基準を変更 軽い「厳重注意」を新設

座小田英史、平林大輔
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 中小事業者向けの補助金事業をめぐり、不正請求をした鹿児島県商工会連合会に対して経済産業省が処分を出す直前に、省内の基準を改正して比較的軽い「厳重注意」を加え、それを適用していたことがわかった。同省は当初、もっと重い「交付停止処分」を検討していたことを認めたうえで、「改正はこの事案のためではない」としている。

 不正請求は昨年6月、同省が公表。商工会の30代男性職員が2014~18年度、販路開拓などを支援する「小規模事業者持続化補助金」を同会の事業者が受給する際に、その申請書を改ざんするなどして水増し請求。計59件約586万円を不正に交付させた。動機について経産省は「補助金交付の実績を増やしたかったようだ」と説明する。

 朝日新聞は経産省の処分に関する内部文書を入手した。文書や取材によると、昨年1月に会計士や弁護士など有識者5人から、どの程度の処分が妥当か参考意見を聴いた。有識者は「(職員が)故意に改ざんを行っていたのはきわめて悪質」などと指摘。処分基準に基づき「4~6カ月の補助金交付停止」の処分が妥当との意見を出していた。

 経産省会計課が3月にまとめた処分の原案では「(商工会は)5年にわたって改ざんを看過した監督責任」があるなどの理由で、4~6カ月の補助金交付停止としていた。

 一方、経産省は処分基準の見直しを進め、6月21日に同省の処分基準「補助金交付などの停止および契約にかかる指名停止など措置要領」を改正し、不正があった場合は「情状に応じて、期間を定め補助金交付停止措置を行う」などとしていたが、比較的軽い「書面または口頭で警告、注意の喚起」の処分内容を追加。その4日後に商工会への処分に適用していた。

 今回の処分について、経産省会計課は朝日新聞の取材に「一時は交付停止の処分を検討した」と認めた上で、「事件後、商工会の運営体制が見直された。不正請求分が弁済されたことなどから現在の処分とした」と説明。処分基準の改正については、「たまたま時期が重なった。この事案のためではない」とした。

 経産省の補助金の交付事務を受託した団体や企業が不正を働いた事案は2009年3月以降、公表ベースで5件あり、不正金額は4万~500万円。1件は今回と同様、事務局による不正で、4件は事務局から申請書類の精査などをさらに委託された業者が不正を働いていた。5件のいずれも不正請求額を返還したうえで、経産省の補助金の交付停止処分を受けている。(座小田英史、平林大輔)