再選支えた「三つの無償化」と進次郎氏の動画 渡具知氏が語った持論

沖縄・本土復帰50年

光墨祥吾、福井万穂、伊藤和行
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 市民が選択したのは、子育て支援や街の振興を重視する市政の継続だった。米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画が浮上して四半世紀。工事が進む中で迎えた名護市の市長選は、政権が支援する現職が再選を果たした。

 23日夜、現職の渡具知(とぐち)武豊(たけとよ)氏(60)の選挙事務所では、当選確実の一報が入ると大きな歓声と拍手がおきた。渡具知氏は支持者とバンザイをした後、「4年間の一定の評価が得られた。2期目も名護の発展のために頑張る」と語った。

 渡具知氏は、4年前と同様、街頭演説で基地問題に触れることはほとんどなかった。告示前の討論会では「名護市の問題が、基地問題だけであるかのような閉塞(へいそく)感をもたらす市政運営は、二度と行われてはならない」と持論を述べた。

 選挙戦で強調したのは、移設を前提に国から交付される米軍再編交付金を主な財源とした、学校給食費保育料、子ども医療費の「三つの無償化」だ。陣営幹部は「絶対に評価されている自信はある」としつつ「『渡具知だからできた』という市民の意識が薄れてしまっている」と危機感を持っていた。

 このため演説では、就任以来、予算確保のため東京の府省庁に要請を重ねてきたことをアピール。安定した財源が地域の発展や市民生活の向上を進めたと4年間の実績をあげ、今後も「生活に直結した振興を」と訴えた。

 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が猛威をふるい、全面支援する自民と公明の政治家が県外から応援に入ることは難しかった。大規模な集会は中止となり、地元企業回りも制限された。

 だが小泉進次郎・前環境相ら知名度の高い政治家の動画をSNSで流したり、徹底した電話作戦を行ったりして組織票を固めた。終盤には渡具知氏自身も「前回よりも手応えを感じている」と自信を見せていた。

 一方、新顔の岸本洋平氏(49)は、険しい表情で玉城デニー知事と開票を見守った。「子育て支援を独自の財源で行うという私の訴えが届かなかった。力が及ばなかった」と頭を下げた。

 岸本氏は「辺野古移設反対」の立場で昨年8月に立候補を表明。「態度を明確にしない市長は代え、復帰生まれのニューリーダーを」と呼びかけた。

 父は、1999年に使用期限などの条件付きで移設の受け入れを表明し、条件が満たされなければ撤回すると語った元名護市長の故・建男氏だ。

 選挙戦では、渡具知氏が実績に掲げる給食費などの無償化を「再編交付金なしでもできる」と訴えた。支援した県議は「選挙に勝っても工事が止まるとは思えない。『(無償化は)基地反対でもできる』と口を酸っぱく言うしかなかった」。だが、再編交付金に代わる財源を明確に示しきれず、支持は広がらなかった。(光墨祥吾、福井万穂、伊藤和行)

名護市民が投票先を選んだ理由は――

〈岸本氏に投票〉

自営業女性(32) 工事が進み辺野古の海は変わった。目の前の利益ではなく未来に本当に必要なことは何かを考えている

整体師男性(30) 米軍再編交付金は期限付き。基地に頼った財政になると国から何を言われても反論出来なくなってしまう

女子大学生(22) 県民投票で意思は明らかにした。移設について立場を明らかにしない姿勢には疑問を感じている

自営業女性(77) 6年前に近くの海岸でオスプレイが大破。50年前に本土復帰した時、こんな未来は想像もしていなかった

〈渡具知氏に投票〉

会社員男性(65) 県民投票では「埋め立て反対」に投票した。しかし工事は進む。基地ができるならどう生活をよくするかだ

農業男性(72) 移設賛成ではないが、2人の孫がおり子育て支援に力を入れた実績を評価した

農業男性(80) 人当たりの良さで選んだ。移設は負担の押しつけだが、国のやることはどうしようもない

無職男性(86) 移設は反対だがもう止められない。モノレールを名護まで通してほしい