海藻食い荒らすウニを水上ドローンで探知

佐々木康之
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 魚介を育む海藻を食べ尽くして「磯焼け」を起こすウニを駆除する新たな手法が、神奈川県横須賀市で生まれようとしている。その担い手は、AI(人工知能)の力でウニを探し出す水上ドローン。昨秋から続く実証試験の結果を反映した「ウニ密度マップ」を手がかりに、23日には実際にウニを駆除。ここ10年で漁獲量が激減したアワビなど水産資源の回復を目指す。

 相模湾に面した荒崎海岸沖。駆除用の漁具を手にした2人のダイバーが漁船から海に潜った。横須賀市の海洋調査会社、マリン・ワーク・ジャパンなどが取り組む磯焼け対策の実証試験も最終段階。船上のスタッフがじっと海を見つめる。

 空気ボンベが空になった約1時間後、ダイバーが船に上がった。

 「あたり一面がウニだった。どこから手を付けるか戸惑うくらい」。ダイバーの一人が、磯焼けで白けた岩が広がる海底の状況を説明した。別の一人は「漁具の先で突っつき潰しながら218個までは数えたが、多すぎてその後は分からなくなった。1時間では潰しきれない」と苦笑いした。

 実証試験には東京海洋大学(東京)と横須賀市、地元の長井町漁業協同組合も参加。昨年9月、国土交通省の助成事業に採択され、スタートした。

 同大の学術研究院教授、田原淳一郎さん(51)の研究室で開発した水上ドローン「ASV(自律型水上ビークル)」に水中カメラとソナーを搭載。カメラを通してAIが検知したウニの位置と、ソナーで探査した海底地形を合成し、個体数の濃淡と水深を示したウニ密度マップを作る――これが実証試験のあらましだ。田原教授は「ハズレなしの駆除を、このマップで実現したい」と狙いを語った。

 三浦半島西岸で進行する磯焼けは、アワビやトコブシなど貝類の漁獲に深刻な影響を与えている。

 長井町漁協の漁場では、2015年度に1トンを大きく割り込んだ後、加速度的にアワビの漁獲量が減少。17年度に100キロを切り、19年度は21キロ、20年度は50キロに落ち込んだ。11年度の漁獲量は約2・8トン。ここ10年で最大99%も減る事態に漁協の新野大介総務部長は、「アワビが捕れたことが仲間うちで話題になるくらい少なくなった」と話す。

 ベテラン漁師の漆山一夫さん(77)は「長年の不漁で素潜り漁師は減った。若手漁師は船での操業で稼がなければならず、高齢化も進む」と嘆く。この一帯にはかつて、素潜り漁師が50人以上いたが、今ではほんの10人ほど。「おのずと駆除の頻度は疎(まば)らになる」と打ち明けた。

 ASVを駆使した取り組みは、こうした悪循環を好転させる可能性がある。人頼りではなかなか広がらない調査範囲が拡大でき、素潜りでは難しい水深5~10メートルの深場での調査も容易だからだ。「ウニの密集域をフォーカスし、効率的な駆除が可能になる」。マリン・ワーク・ジャパンの松永浩志さん(44)は、今回の試験の意義を説明する。

 ASVの全長は約2メートル。重量は約45キロで、冬の荒波に耐えるため推進器を追加しても100キロほど。漁師たちが多用する軽トラックでも運搬できるスケールで、田原教授は「漁業者にとっても身近な存在になった」と強調する。関係者は今後、実証試験の成果を基に、実用化に向けた検討を進める方針だ。(佐々木康之)

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    太田泉生
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=人権)
    2022年1月25日17時39分 投稿
    【解説】

    横須賀でウニ!?と驚かれるかもしれませんが、深刻な問題です。 あの高級食材のウニ。北海道のイメージがありますが、実は三浦半島の海にも生息しています。海藻を食い荒らしてしまう厄介者で、採取して食べようと思っても身入りは悪く、食材にはなりませ