ころ柿継承へ農福連携 甲州の作業所が試行
大ぶりの柿を天日で干してつくる山梨県特産の「ころ柿」。高齢化も進み生産農家が減りつつある中、障害者が作業を手伝い、特産品づくりを継承しようという試みが、峡東地域で始まった。農福連携の取り組みとしても期待されている。
ころ柿は、漢字で枯露柿とも書き、お歳暮などの贈答品として人気の高級干し柿。通常より大きい渋柿、甲州百目柿を天日干しさせてつくるが、生産量は減少傾向にある。
産地の甲州市松里地区を擁するJAフルーツ山梨によれば、2016年度に9万750キロだった生産量は、20年度に3万5556キロまで減少。農家数は484軒が328軒になった。天候で増減のある生産量と違い農家数は年々減少が続く。特に20年度は前年度より90軒も減った。
最大の原因は農家の高齢化だが、関係者が指摘するのが、ころ柿を個別包装するルール化の影響だ。食品表示法で成分表示が義務づけられ消費者の意識が高くなったことを受け、JAでは数年前、成分表示を記した個包装での出荷を定めた。細かな作業を負担に思う農家の中には、出荷を見送る人もいたという。
「このままでは、特産のころ柿づくりが衰退し、継承が難しくなるかもしれない」。昨秋設立された峡東地域農福連携協議会ではそう考え、障害者に作業の一部をサポートしてもらうことにした。
協力したのは、笛吹市春日居町の就労支援事業所「創造工房くわの家」の通所者たちだ。昨年12月、甲州市の農家から請け負った。まず、2人の通所者が天日干しされたころ柿を事業所に運んだ。その後、普段は別の食品づくりをしている通所者が、乾燥剤と一緒に一つひとつ食品用フィルムに包み、出荷できる状態に仕上げた。
「高齢の農家にとっては面倒でも、こうした作業を苦にせず、丁寧にきっちりできる障害者もいることが確かめられた。まずはこうした作業から始め、畑での作業もゆくゆくは試していきたい」。同協議会の会長で、くわの家の雨宮清貴施設長はそう話し、今後に期待を寄せていた。(永沼仁)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。