北山杉の間伐材で染料、優しい色合いの布製品に 北区の会社が開発

河原田慎一
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 洋服やインテリアなどの布製品をデザインする京都市の会社が、北山杉の間伐材や倒木で染料を作り、天然の色合いを生かした布製品の新ブランド「ロウウッド」を立ち上げた。ごみや消費エネルギーを極力減らし、伝統的な手染めの技を生かして、染織ファッションの「持続可能性」を提案する取り組みだ。

 この会社は北区の「デザインハウス風(かぜ)」。国内ブランド向けに生地をデザインしたり、プリントされたデザイン生地を海外に輸出したりしている。

 米ニューヨークや伊ミラノの見本市に出展するたび、松井啓介社長(59)が海外のバイヤーから聞かれてきたのが、「SDGs(持続可能な開発目標)についてどう考えているのか」という質問だ。

 SDGsはファッション業界でも取り組むべき課題になっている。ファストファッションがもてはやされる一方、大量生産と大量消費でごみが生まれ、そのためのエネルギー利用も環境に負担をかけていると指摘されているからだ。

 例えば、松井さんの会社のように布を染めて商品を作る染織の業界では、仕上がりが均一で色があせにくい化学染料を使った商品づくりが主流。染めた生地を洗い流す時に出る排水が、環境汚染の原因の一つになっていると言われる。

 ただ、「染織の現場でも、再生された原料や、よりエネルギー消費の少ない方法を使う意識が高まってきた」と松井さんは話す。

 SDGsについて考えてきた松井さんも、木材から抽出して、環境に優しい染料を検討するように。そんな時に知ったのが、床柱などの銘木として知られる「北山杉」の産地の話だ。現地では間伐材の活用が課題になっていた。林業従事者が減って手入れが行き届かなくなり、スギの倒木も問題になっていた。

 そこで松井さんらは、こうしたスギのチップ(木くず)の提供を受け、染料の開発に乗り出した。

 チップを専用の釜で丸一日かけて煮出し、さらに別の機械で濃縮。コーヒーのような濃い茶色の抽出液に、天然素材でできたのりを混ぜると、ペーストのような染料が完成した。

 同じように天然素材から染料を抽出する「草木染」では、色を安定させるために鉄などの金属を「媒染剤」として使うが、それも使わない徹底ぶりだ。

 煮出すための燃料にも、スギで作ったペレットを使う。煮出した後のチップも燃料として再利用する。最終的に出るごみは、わずかな灰だけ。その灰も肥料として使える。

 こうしてできた染料で染めると、同社が「アースカラー」と呼ぶ明るい茶色に。デザインに合わせて3~5種類の濃淡を付けられる。化学染料用のインクジェットプリンターは使えないので、京都の伝統的な「手捺染(なっせん)」の技で職人に染めてもらう。洗い流す排水も天然の素材なので、環境への負担は極力減らせているという。

 できあがった生地で作ったのは、衣服やクッション、壁掛けなどの布製品。化学染料で染めた製品に比べると、色が安定しにくく、日光などによって退色しやすいといった課題はあるが、特殊な技術で乗り越えたという。3月に「みやこめっせ」で開かれる見本市「京都インターナショナル・ギフト・ショー」に出展する予定だ。

 松井さんは「優しい色合いで、徹底して『人に優しい』ものができた。同じデザインでも、それぞれに一点物としての良さがある。大量生産に対するアンチテーゼとして、一石を投じたい。地元の産品と伝統の技をあわせたもの作りで、世界に誇る京都の価値を高めたい」と話す。

 新ブランドは今後、京都発の新技術として海外展開も進めていくつもりだ。(河原田慎一)