8300万枚ものアベノマスクを含む布マスクが、ひっそりと倉庫に眠っている。政府の廃棄方針を受け、再利用したいという声が高まる一方、今まで布マスクの再利用に尽力した団体は複雑な思いを抱える。
厚生労働省は昨年末から、マスクが欲しいという自治体や個人の希望者を募っている。元々1月14日で締め切る予定だったが、希望者が多いとして28日まで延長することを決めた。
「子どものよだれかけにリメイクします」。群馬県に住む30代の女性は布マスクを申し込んだ。
岸田文雄首相が布マスクの廃棄を表明した日に思い出したのは、コロナ禍で食べ物を捨てざるを得ない飲食店のテレビ映像だった。「いろいろなものが簡単に捨てられている。少しの手間で復活するならば、がんばってみたい」。ズボンのひざ当てなどに直して使うことも考えているという。
神奈川県の元教師の女性(72)は、夫の介護用ガーゼとして使うという。「政府の判断にがくぜんとした。他に選択肢はなかったのか」と怒りを込める。つきあいのある教え子たちと一緒に使い道を考えたいと話す。「日本のもったいない精神を次世代にも伝えていければと思う」
大阪府のSDGsコンサル会社「ネクストエージ」は、ツイッター上で全国から集めたアベノマスクの再利用方法を公開している。
コースターや髪留め、化粧水用のコットン、水を浸した布マスクにスプラウトの種を置けば簡易畑となる。ガーゼを数枚重ねてキャンバスにすれば、独特の風合いの絵画が描ける。流行中のキャンプでは、鍋つかみとしても使える。アイデアは満載だ。
担当者は「このまま捨てられてしまえば、認知度が上がりつつあるSDGsが後退してしまう。布マスクをマスクではなく、ガーゼと考えれば用途は広がる」と話す。
集まりすぎて困ったマスク
アベノマスクに翻弄(ほんろう)された人もいる。
「やっと解放される」。神奈…

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