第1回銃殺された恋人、国軍は墓を掘り起こし…「私も泣きたい」母は言った

有料会員記事ミャンマーはいま

ヤンゴン=福山亜希
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 彼女が銃撃された現場に立つと、今も喪失感で胸が苦しくなる。

 ベイベイーさん(19)は昨年3月3日、第2の都市マンダレーで恋人のチェーシンさん(当時19)を亡くした。

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2020年11月の総選挙で、投票を済ませたことを示す紫のインクを小指につけて写真に納まるチェーシンさん(右)とベイベイーさん=チェーシンさんのフェイスブックから

 チェーシンさんはその日、ベイベイーさんの黒いシャツを着て、国軍に抗議するデモに参加していた。シャツの胸元には「全てうまくいく」と英語でプリントされていた。

 フェイスブックには抗議の意思を示す「3本指」を掲げた写真や、自分に万が一のことがあれば臓器を提供したいというメッセージを書き込んでいた。

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マンダレーで2021年3月3日、クーデターに抗議するデモに参加したチェーシンさん(中央)。治安部隊の銃撃を受け、死亡した=ロイター

 チェーシンさんは仲間とともにデモの最前線に立ち、銃を構える治安部隊とにらみ合った。しばらくして治安部隊が予告なく銃を水平に撃ち始めた。

 パチンコで鉄片を飛ばして反撃するデモ参加者もいたが、チェーシンさんは「治安部隊まで届かない。(反撃は)やめて」と叫んだ。

 銃を構えながら治安部隊がじりじりと距離を詰めてきた。チェーシンさんは立ち上がり、逃げようとした。その瞬間、銃声が鳴り、チェーシンさんの体が路面に崩れた。銃弾が頭にめり込んだ。

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2021年3月3日、マンダレーで治安部隊が発砲し、地面に伏せるデモ参加者たち=ロイター。チェーシンさん(左手前)は恋人のベイベイーさんから借りた黒いシャツを着てデモに参加し、銃撃されて亡くなった

 「若い女性が射殺された」との投稿は、ツイッターやフェイスブックで瞬く間に広がった。「全てうまくいく」と書かれたシャツの写真とともに、死を悼む声がSNSで拡散した。

 ベイベイーさんも投稿に気づいた。「きっと何かの間違いだ」。遺体が運び込まれたという仏教施設に駆けつけたが、救急隊員に押しのけられ、顔を確認できなかった。病院にはチェーシンさんの父親の姿もあった。父親は静かに葬儀の手配を進めていた。間違いであってほしいという願いは打ち砕かれた。

クーデター後、国軍によって殺害された市民は1500人に迫っています。しかし、遺族の声はほとんど伝えられていません。なぜ口を閉ざすのか。誰かに口止めされているのか。弾圧による犠牲者の象徴となったチェーシンさんの恋人が取材に応じました。

踏みにじられた尊厳

 悲劇はこれで終わらなかった…

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