新型コロナ対策は「人流抑制」よりも「人数制限」が適している。そして、感染が拡大すれば若者は受診せず自宅療養も可能とする――。専門家の有志が示した新しい考え方は、どんな経緯で導き出されたのでしょうか。有志の一人で、政府のコロナ対策分科会メンバーの小林慶一郎・慶応大教授(経済学)に聴きました。
人命の「コスト」
――有志の提言は、これまでの強い行動制限から、積極的に社会経済を回す方向への転換を求めています。なぜですか。
オミクロン株の性質が今までと違っていることに対応して、対策も変えなければいけないからです。
オミクロン株の特徴は、感染力が非常に強くて、しかし少なくとも若い人や基礎疾患のない人は重症化しにくいこと。感染が拡大すると、軽症者が増えてしまいこれまでにない逼迫が起きかねません。
――それが対策にどう影響しますか。
感染者数を抑えようとすると、社会経済への強い規制が必要になります。その典型が人流抑制であり、飲食店の休業や時短です。生活に困り、自殺する人が増えてしまいます。
――つまり、人流抑制により失う人命と、人流抑制により助かる人命のバランスがこれまでと変わった
そうです。オミクロン株の場合、人流抑制をすることによるコストベネフィット(費用対効果)があまりに悪い。社会経済を止めることによって失われる人命の「コスト」の方が大きいのです。
それより、感染が起きやすい場面・場所に対策を絞ってリスクを減らす。それが「人数制限」です。加えて「3密」を避け、個人ができる感染対策をきちんと続けることも重要です。
リスクをとる価値は十分にある
――人流抑制と人数制限は同じことではないか、という指摘もあります。
人流抑制をすれば、飲食店な…

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