愛知県の大村秀章知事がいらだちを募らせている。感染拡大を防ぐ「切り札」とみる新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が、思うように進まないためだ。豊富な「余剰ワクチン」を武器に、国に先駆けて接種計画の前倒しを次々と打ち出してきた愛知で、何が起きているのか。
24日午前。ワクチン3回目接種を促進するため、県営名古屋空港ターミナルビル(豊山町)で始まった大規模接種会場に大村氏の姿があった。「接種の『大加速』を進める」。大村氏は接種会場の視察後、県庁であった記者会見でそう強調してみせた。
伸び悩む予約と接種 大村知事「早く打って登録を」
こうした強い言い回しは、実は大村氏の焦りの表れでもある。今のところ県内の予約状況は芳しくなく、同会場の24日分の予約率は25・7%。同日に開所した藤田医大病院(豊明市)でも32・6%にとどまる。両会場とも25日分以降は、予約率が10%前後と低迷している。
接種率も同様だ。接種登録が後回しになっているか、接種券が届かず登録できない影響もあるが、23日時点で3回目接種を終えた人は約14万7千人(接種率1・95%)。昨年12月1日に接種が始まった医療従事者(約27万人)は、「20万人は打った」(大村氏)と推定するが、それでも伸び悩みは否めない。
高齢者施設も出足が鈍い。県は12月20日から利用者や従業員の前倒し接種を認めたが、1月12日時点で接種を終えたのは63施設(2300人)。今後の接種予定は2061施設で、合わせても2割強にとどまり、大村氏は「12月から打っていいと言っている。早く打って登録を」と呼びかける。
豊富な余剰ワクチンで「前倒し」図るも…
愛知は、米ファイザー社製の余剰ワクチン約58万回分を抱え、ほかの都道府県に比べ3回目接種を進めやすい環境にある。1、2回目の接種で、米モデルナ社製を使う大規模接種会場や職域接種の数を増やすなどして得た「貯蓄」だが、大村氏は昨年12月以来、それを元手に3回目接種の前倒しをたびたび図ってきた。
国からワクチン供給の連絡があるたび、一般高齢者や医療従事者家族などの接種間隔を6カ月に前倒しすると発表。2月1日からは18歳以上の全員が対象となるとしている。
前倒しに傾注しているのにも…

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