見晴らしのいいヤンゴン中心部の陸橋の上から、街の全景を撮ろうとしていたときのことだ。すぐ近くに見知らぬ20代くらいの若者がいた。若者は街を見渡しながらスマホで撮影を始めた。
私も同じようにスマホを構えようとしたのだが、次の瞬間、事件は起きた。数人の男たちが突然現れ、声を上げながら若者につかみかかり、羽交い締めにした。
男たちのうち一人は手に警棒を持っていた。身動きの取れない若者の胸をめがけて、警棒を何度も振り下ろした。「ドスッ、ドスッ」っと鈍い音が響き、若者は叫び声を上げてしゃがみこんだ。それでも警棒を握った手を休めず、今度はすねやひざを打ちのめした。「スマホを取り上げろ!」。黙って様子を見ていた年長の男が、警棒で殴り続ける男に命じた。その男たちは、市民の動きに目を光らせる私服警官だった。
男たちの視線が、こちらに向いた。「こっちを見るな」。若者の脇をつかんだ男が語気を強めた。男は若者に手錠をかけ、近くの警察署に連行していった。
若者が何をしたというのか。私は助手とともに現地のメディア関係者たちに話を聞いた。若者を知る関係者によると、若者は大手メディアが雇ったフリーランスのカメラマンだという。
連行は、街から人が消えた日だった
連行された日は昨年12月1…
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