中学入試で最頻出、「雑草魂のウソ」とは 雑草研究者が語る真の戦略
雑草の研究者が執筆した本が中学入試で頻出となっている。進学塾大手の日能研によると、「国私立中学入試の国語で最もよく出題された作者」で3年連続1位。『はずれ者が進化をつくる』『雑草の成功戦略』といったタイトルの著作には人間の世界にも通じるテーマが満載だ。執筆した静岡大の稲垣栄洋教授(雑草生態学)に話を聞いた。
――雑草生態学とはどんな学問ですか?
「雑草とは『望まれないところに生える植物』と定義され、国内では500種類ほどがいます。例えば公園や緑地管理、農業をする上で、雑草を防除することが重要です。除草剤などを含め雑草を防除する方法を開発したり、防除のために雑草の特徴を明らかにしたりするのが「雑草学」です。変わった学問って思われるかもしれないが、私だけが研究しているわけじゃなく、全国で何千人が研究しているような学問です」
――なぜ雑草に興味を?
「大学4年のとき、農作物の研究をする作物学を専攻しており、畳の原料となるイグサを育てていました。そのとき、隣に見慣れない草が生えてきて、指導教官に聞くと、『花が咲けば図鑑で調べられるから、咲くまで置いておきなさい』と言われ、そのまま置いておきました。作物はどう育つかは図鑑にある程度書いていますが、雑草は周囲の環境に合わせて成長の仕方を変えてしまう。毎日見ているうちに雑草に興味を持ち始め、大学院は雑草学の研究室に進みました」
実は弱い雑草、弱さゆえのしたたかな戦略
――雑草のどういう点が魅力なのでしょうか。
「雑草はみなさん強いと思っているかもしれませんが、実はとても弱い。雑草にとって重要なことは花を咲かせ、種を残すことです。ただ、弱肉強食の自然界のなかで競争に弱いことは致命的です。隣の植物より高く大きく育ち、日光を独占した方が勝ちというのが植物の競争のひとつですが、雑草はそんなところで勝負をしてもしょうがない。弱いからこそ、逆境を乗り越えられるように、したたかな戦略を立てて生きています」
――雑草は弱いんですか。意外です。
記事の後半では、弱い雑草が勝負するためにとった、合理的な生存戦略を紹介します。中学入試に紹介される理由の一端が見えてきます。
生物の環境は厳しく、「ナン…