芥川賞受賞によせて 砂川文次さん寄稿 いつもの1日に没入する

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 受賞の連絡は自宅で受けた。いつも通りの時間に帰ってきたが、今にして思えば、いつも以上にいつもに没入しようとしていたのかな、ということだ。

 その日私は、下の子を保育園へ送り届けて出勤した。家にいるときも業務時間中も、雑念が頭にのぼらないよう、どこか意識していたと思う。普段は気が向いたときにしかやらず、そのために妻から度々注意を受ける、溜(た)まっていない洗濯物を畳むとか本来ならかけるほどではない掃除機をかけるとか名もなき家事とかを、自ら進んでやっていた。やることも稀(まれ)にはあるが、仮にこの日が本当のいつもの日だったなら、私はやっぱりそのまま出勤をして妻のフラストレーションを溜めることに貢献していたに違いない、と思うのだ。業務中も、業務の集中する年度末が近づいているということもあって、本来なら余裕がないにもかかわらず、細々とした業務にも気を回していた。

 そして何よりも子供を送り届…

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