繊細な技巧で演じる能楽堂版「ガラシャ」 モノオペラに込めた思い
欧州を拠点に活動するソプラノ歌手、田中彩子さん(37)が29日、東京の国立能楽堂で、自身が手がけたモノオペラ「ガラシャ」を上演する。高音域を繊細に操るコロラトゥーラソプラノで、戦国時代をキリスト教の信仰に生きた日本女性の姿を描き出す。
東京・千駄ケ谷の国立能楽堂で1月29日午後5時開演。問い合わせは「難民を助ける会」(03・5423・4511)か、同会のウェブサイト(https://aarjapan.gr.jp/event/2971)へ。
ピアニストになるには手が小さすぎる。限界を感じていた17歳のころ、ピアノの先生に勧められた声楽のレッスンで「世界でも珍しい声」とほめられた。試しにと参加したウィーンの研修で宮廷歌手から「私が教える」と見いだされた。
高校を卒業してすぐに渡欧した。声楽もドイツ語もまったくの初心者。声楽の単語を事前に調べ、指さしや身ぶり手ぶりで個人レッスンを重ねた。
「音楽の都」ウィーンでの無我夢中の3年が過ぎたころ、将来を考えて不安がよぎった。日本の友人たちは就職が決まり始めているのに、自分はこのまま歌でやっていけるのか。不安から、高い音が出なくなってしまった。
歌うことがすべてだった生活から一転、数カ月、歌から離れてみた。それまでは、のどに良くないからと大声は上げず、夜更かしもしてこなかった。夜のクラブに踊りに出かけ、友人と大声で笑った。旅にも出てみた。もし、もう歌はいいという気持ちになるなら、音楽家の道を諦めて日本に帰ろうと思っていた。
だが、そうはならなかった…