ドッグランにドローンも…宿泊客減った沿岸のホテル旅館、集客に工夫

東野真和
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 東日本大震災の復興事業の従事者が引き揚げ、加えてコロナ禍が追い打ちをかける。視察や観光の客が減る岩手の沿岸地域。ホテルなど宿泊施設は厳しい経営を強いられている。その中で、自分の趣味から新たな個性を生み、集客につなげているところがある。

 昨年11月、岩手県釜石市平田の「ホテルシーガリアマリン」(倉田昌史代表)は「ペット感謝祭」を初めて企画した。3日間で約300人の愛犬家と飼い犬が訪問。ホテル前の1350平方メートルのドッグランで愛犬が駆け回り、ドッグフードや装飾品の露店が並んだ。

 1964年にオープンし、冠婚葬祭ができる広間もあるホテルだ。一時は復興事業関係者の利用がなくなり、閑古鳥が鳴いた。そこで動物好きの創業者一族が思いついたのが、「ペットファーストホテル」として売り出すことだった。

 25部屋のうち8部屋の畳をカーペットにし、犬用ゲージやトイレ、皿などを備えつけ、一昨年6月からペットと一緒に泊まれるようにした。飼い主の宿泊料に1650~2200円を追加すれば同部屋で泊まれ、ドッグランやペットホテル、ドッグバスも使える。食事は一緒に部屋食だ。

 倉田代表の義理の妹で、ホテルを切り盛りする松川里海(さとみ)さん(39)がSNSでPRすると、全国から宿泊者が来てくれた。松川さんは「コロナ禍がおさまり、割引の支援制度に頼らずとも来てもらえるよう、いろいろと企画したい」。

 同様に、ペットと泊まれる宿泊施設は増えている。特に宮古市に多く、浄土ケ浜パークホテルは、ベランダがドッグランになった部屋を昨年初めから2部屋用意し、人気になっている。ホテル近江屋は4階の5室をペット同伴用に。グリーンピア三陸みやこも、ドッグランを備えるなどした。

「空から町を眺めたいと思う人もいるのでは?」

 目新しいアイデアで客を迎える宿泊施設もある。

 大槌町の「小川旅館」は昨年から「空中散歩」と銘打ったサービスを始めた。

 主人の小川勝己さん(62)が車で海岸まで連れて行き、ドローンの操作方法を教えてくれる。搭載カメラで録画した動画は、お土産だ。料金は1人3千円。

 津波で旅館が流され、2012年末から郊外で14室の仮設営業を続ける。だが、コロナ禍で誰も泊まらない日も一時期あった。

 次男が操作していたドローンにひかれた。自分も覚え、復興していく町を上空から撮影するのが趣味になった。ある時、考えた。「自分と同じように、空から町を眺めたいと思う宿泊客がいるのではないか」

 晩ご飯のときには、小川さんが撮影した映像を食堂のテレビ画面で流す。BGMには、大槌町出身のミュージシャン臺(だい)隆裕さんが、この「上映会」のために作って無償提供してくれた、スローなクラシック風の曲「OGAWA」が流れる。

 まだサービス利用者は20人ほど。「PR不足かな。広い場所でやるのでコロナ禍でも問題ない。ドローンを5台そろえたので、一緒に楽しみたい」と話す。東野真和