分子が「車」に?物質・材料研究機構チームがナノカーレースに再挑戦

谷口哲雄
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 分子を車に見立てて移動させて競う「国際ナノカーレース」に、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)のチームが再び挑む。レースは3月下旬にフランスで開かれる。5年前の第1回大会では途中棄権に終わっており、メンバーたちは雪辱を期している。

 レースは全長数ナノメートル(ナノは10億分の1)の分子を直径8ミリの金の円板上で移動させる。金の表面に自然にできる幅約3ナノメートルの溝に沿って分子を走らせ、24時間で進んだ距離を争う。

 分子を動かすには走査型トンネル顕微鏡(STM)という装置を使う。物質の表面を針でなぞって原子レベルで構造を調べたり、原子を一つずつ動かしたりできる。針を分子に近づけて電圧を加え、電気エネルギーで分子を動かす。

 ナノカーレースは、分子に回転や移動など機械のような機能を持たせる「ナノマシン」の技術向上をめざし、2017年に第1回が開催された。物材機構によると、ナノカーの操縦は「地球にある野球ボールを宇宙から操作するくらい難しいこと」なのだという。

 今回は日、米、独、仏などから計8チームが参加する予定。STMを操作する「ドライバー」は、仏南部のトゥールーズにある国立科学研究センターに集まり、パソコンを使って自国にあるSTMを遠隔操作して分子を動かす。

「まずは完走が目標」

 物材機構のチームは、原子・分子レベルで新材料を開発する「国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)」などに所属する5人で編成される。STMの設計やナノカーの分子合成、動作の理論解析などの専門家が集う。

 今回のナノカーは酸素や炭素、窒素など約150の原子でできている。電気の刺激を受けると分子内の電子の分布が変わり、金の表面と分子の間に働く力が変化して移動する。

 前回はチョウの羽のようにバタバタ振動して進むナノカーで参戦した。今回は分子そのものは変形せず、金の表面をすべるように動くという。分子を最終的にどんな形にするか、詰めの検討が続いている。

 物材機構チームは、前回は主催者が用意したパソコンソフトの不具合で途中棄権となった。チームリーダーの中山知信・MANA副拠点長(59)は「まずは完走が目標で、できれば上位をめざしたい。他のチームが考えなかったコンセプトを持ち込み、ナノマシンに新たな方向性を示せれば」と話す。(谷口哲雄)