沖縄の大学院大学、創業支援のファンド設立へ 世界の頭脳で地域振興
先端技術で事業を起こすスタートアップの育成に、沖縄科学技術大学院大学(OIST)が本腰を入れる。開学10年、沖縄復帰50年の節目の今年、50億円規模となるファンドを立ち上げる。研究面では世界最高水準の頭脳を集めながら地元振興への貢献が不十分とも指摘される中、経済活性化に一役買って存在感を示そうという狙いだ。
OISTが研究分野だけでなく、スタートアップへの支援で独自色を打ち出そうとしています。記事後半では、イスラエルで起業支援に携わったOIST副学長にインタビューしました。
プレハブ平屋で創業支援
沖縄県恩納村にあるOISTのメインキャンパスから車で5分ほどの距離に、真っ黒なプレハブの平屋が立つ。OISTが設立した創業支援施設だ。起業家育成プログラムで採択された学外のスタートアップなど30社が入居。施設内には専用デスクが並ぶオープンスペースがあり、起業家らがパソコンを広げて作業する。実験室や資材の保管庫なども並ぶ。
ここを拠点に活動する米国人起業家、イーライ・ライオンズさん(37)は昨年5月、東京から沖縄に移住した。微生物の遺伝子解析ソフトを開発する。東京大学大学院で学んだ後、スタートアップを立ち上げた。高温多湿で知られる沖縄の亜熱帯気候が育んだ土壌から採取した微生物を調べ、肥料や殺菌剤などに活用できる化合物の抽出をめざすという。
OISTは2018年度から学外の起業家を育成するプログラムを始めた。技術面や沖縄への貢献などを審査し、これまで7件を採択。最大1千万円の起業資金を提供するほか、起業家らを約10カ月間、OISTの職員として雇用する。
世界水準の研究機器を活用
ライオンズさんは、DNA解析装置や電子顕微鏡など世界最高水準の研究機器を使えることをメリットとして挙げる。海洋科学などの研究者と情報を共有することもできるといい、「OISTの研究は海外で高く評価されているので、海外の投資家から興味を持ってもらいやすい」と話す。一方で「既に投資家らとのネットワークを持っていない場合、沖縄に住みながら関係をつくっていくのは難しい」とも指摘する。
こうした状況をOISTも懸…
【視点】沖縄科学技術大学院大学構想は2001年、当時の尾身沖縄相兼科学技術相が主導して動き出しました。「沖縄振興×科学技術立国」のひとつの取り組みとして、ノーベル賞級の学者を集めて「知の集積」を狙うというやり方で、今年で開学10年になるようです。