市民1400人超殺害、スーチー氏の軟禁続く クーデター1年で何が

ミャンマーはいま

ヤンゴン=福山亜希
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 ミャンマー国軍がアウンサンスーチー氏ら政権幹部を拘束し、全権を掌握したクーデターから、2月1日で1年が経つ。「アジア最後のフロンティア」と期待され、世界中の投資を集めていた国は今、出口の見えない混乱の中にある。

 国軍はクーデター後、抗議する市民らに実弾を発射し、抗議デモを力ずくで抑え込んできた。現地の人権団体「政治犯支援協会」によると、クーデター以降、今月26日までに殺害された市民は1494人に上る。

 大規模な抗議デモを鎮圧した後も、国軍は取り締まりの手を緩めていない。国軍に批判的なメディアの免許を取り上げ、記者を次々に拘束。拘束後に死亡したカメラマンもおり、拷問の可能性が指摘されている。隣国タイに逃れて取材を続ける記者も少なくない。

 スーチー氏を支持する民主派は昨年4月に「国民統一政府」を立ち上げ、国軍に対抗した。自衛の組織「国民防衛隊」を作り、昨年9月には戦闘開始を宣言した。

 この動きに賛同した市民が各地でそれぞれの国民防衛隊を立ち上げた。国民防衛隊は、都市部では国軍施設や国軍兵士を攻撃し、地方では現地の少数民族武装勢力と協力して国軍と戦っている。

 一方の国軍は、国民防衛隊が潜伏する地域に砲撃や空爆を加えており、大勢の避難民が出ている。

 クーデター後の政情不安に新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、経済は大きく落ち込んでいる。世界銀行は、2020年10月~21年9月の国内総生産(GDP)が前年から18%減り、この期間中に100万人が職を失ったとみている。21年10月~22年9月も低迷が続く見通しで、前年から1%の増加にとどまるとの予測だ。

 関係者によると、国軍に拘束されたスーチー氏は現在、国軍が用意した建物に軟禁されているという。スーチー氏は、これまでに汚職など17件の罪で訴追された。判決が出た5件全てに有罪判決が下され、計6年の禁錮刑が言い渡された。残りの裁判が進めば、刑期はさらに延びる可能性が高い。

 スーチー氏率いる政党・国民民主連盟(NLD)が勝った2020年の総選挙に不正があったと主張する国軍は、23年にやり直しの総選挙を実施するとしている。国民に人気のスーチー氏を出馬させないため、裁判によって政治生命を奪う思惑があるとみられる。

 国際社会は有効な手立てを講じられていない。欧米諸国経済制裁を科しても、国軍は暴力を止めなかった。東南アジア諸国連合(ASEAN)は国軍側との協議で暴力の一時停止を約束させたが、国軍は治安維持名目で武力弾圧を続けていて、約束は実現していない。(ヤンゴン=福山亜希)

【連載】弾圧と抵抗のフロンティア ミャンマー政変1年

ミャンマー国軍のクーデターから、2月1日で1年。武力弾圧は続き、「アジア最後のフロンティア」と呼ばれた経済は混乱しています。そんな中、勇気ある市民らの証言を通じ、社会が負った深い傷を見つめました。