緊迫のウクライナ情勢、経済制裁は「返り血」も 数少ない成功例

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聞き手・佐藤達弥
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 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が懸念されるなか、米国が対抗手段に挙げる経済制裁。これまでもロシアや北朝鮮、イランなどに対して実施されてきましたが、そもそも効果はあったのでしょうか。そして今回は、侵攻への歯止めになるのでしょうか。国連安全保障理事会のイラン制裁専門家パネル委員を務めた経験があり、経済制裁にも詳しい鈴木一人(かずと)・東大大学院教授(国際政治経済学)に聞きました。

 ――米国の経済制裁はこれまでも、ロシアのクリミア半島併合や北朝鮮の核・ミサイル開発、イランの核開発などに対して続けられてきました。果たして、その効果はあったのでしょうか?

 まず、米国の経済制裁というのは、敵対的な国に対して武力による制裁まではできないので、戦争の代わりにやるものという性格があります。戦争の代替物ではありますが、戦争と同じ効果を期待するのは難しいと思います。

 できるなら武力でやっつけたいが、それはリスクがあるのでできない、だから制裁ということになる。経済制裁は政治的に使いやすいツールですし、「制裁をした」と発表することで国民の憂さ晴らしにもなるという効果もあります。だからこそ乱発されてきました。制裁は初めから目的志向ではないのです。相手の行動を変えるよりも、制裁を与えること自体が目的化しているともいえます。

イランは数少ない成功例

 ――相手の行動を変えさせた例はないのでしょうか?

 成功例は少ないですが、一つ挙げるとすればイランですね。2002年に核開発を進めていることが発覚し、英仏独が交渉に乗り出したけれども失敗したため、国連や各国が制裁を加えました。米国は12年には、イランと取引した金融機関を米金融システムから締め出す金融制裁も発動しています。

 ――金融制裁って何なのでしょうか?

 貿易を含めた国際的な取引は多くの場合、米ドルで代金が支払われます。世界中の企業は米国の金融システムを介し、ドルでの支払いをしています。つまり、米国の金融システムを使えなくなるということは、海外にドルでの送金ができず、国際的な取引をすることがほぼ不可能になることを意味します。これを恐れて、各国の企業がイランと取引をしなくなりました。イランはドル決済での原油輸出などもできなくなり、経済的に打撃を受けました。

 その後、13年に対外融和路線を掲げる保守穏健派のロハニ政権が発足。2年後、核開発を制限するイラン核合意が米英仏などとの間で結ばれました。18年になって、トランプ米政権が核合意から一方的に離脱してしまいましたが。

 ――イランが態度を変えたのは制裁が厳しかったからですか?

 国際的なドル決済ができなく…

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