性的少数者理解の条例案、暗礁に 自民内に反発

池田拓哉
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 性的少数者に対する偏見や差別をなくそうと、栃木県議会の超党派議員が成立をめざす「性の多様性に関する理解の増進に関する条例(仮称)」案が暗礁に乗り上げている。最大会派の自民党会派内で意見がまとまらず、2月議会への条例案提出も見送られることになった。

自民会派内で異論、暗礁に

 福田富一知事も、性的少数者カップルを公的に認める制度を導入したい意向だが、自民への配慮で身動きが取れずにいる。

 条例案は、すべての県民の性的指向や性自認の尊重などを基本理念とした上で、県や県民、教育関係者の責務を規定した内容。県は教育や啓発、相談体制整備などに責任を持ち、県民は県の施策に協力するよう求めている。罰則規定がない理念条例だ。

 超党派でつくる「県議会条例作成検討会」が条例案を策定した。昨年9月に公表され、パブリックコメントも実施された。12月議会で成立させ、1月施行をめざした。

 しかし、主導した自民内から異議が出て意見がまとまらず、12月議会に続いて、2月17日開会の2月議会での条例案提出も見送られることになった。

 自民県連の小林幹夫政調会長は「党内やパブコメに賛否両論があり、精査に時間を要すると判断した。廃案ではない」と説明する。性的少数者を巡る政策が定まらない党本部の現状も影響しているという。

 自民会派内の「条例検討会」メンバーで慎重派のある県議は「保守的な価値観の否定につながるのではないか。差別やいじめは解消すべきだが、条例の理念を『正しい理解』とするのは推進派の一方的な主張で、とげとげしく感じる人もいる」と訴える。

 立憲民主党の県議らでつくる「民主市民クラブ」の松井正一幹事長は「条例案には賛成。自民内の混乱で提出に至らないのは大変残念」と話した。

「宣誓制度」にも支障

 福田知事は昨年末、朝日新聞の取材に対して「パートナーシップ宣誓制度は速やかに進めたい」と意欲を示し、条件として条例成立と半数以上の市町の賛同を挙げた。県が制度の要綱をつくり、各市町が参加する青写真を描いている。

 県は、条例が宣誓制度の導入を後押しすると期待してきた。ある県幹部は「県が先走るわけにはいかず、これでは市町への意向調査も進まない」と明かした。

 東京都では2018年10月に、性的少数者を理由にした差別禁止を定めた条例が成立し、19年春から全面施行されている。

 県内では栃木、鹿沼、日光各市がパートナーシップ宣誓制度を先行導入し、佐野市も9月に始める予定。茨城、群馬県はすでに宣誓制度を実施し、栃木を含む3県で20年に共通化した「結婚応援カード」の対象に同性カップルを含むが、栃木は除外したままだ。(池田拓哉)