米テスラ、2021年の純利益7倍増 生産優先で新車投入は見送り
電気自動車(EV)で世界最大手の米テスラが26日発表した2021年通年の決算は、純利益が前年から7倍以上増え、過去最高となった。世界的な半導体不足のなかでも生産を伸ばした。今年は生産拡大に集中するとして、新車の投入は来年以降に見送る方針だ。
21年12月期決算は、売上高が前年比71%増の538億ドル(約6・2兆円)、純利益は同約7・7倍の55億ドル(約6300億円)だった。昨年の世界の販売数は約94万台となり、前年から87%増えた。
イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は電話会見で「今年も楽に50%を超える成長を見込める」としたうえで、「今年は生産の拡大に集中する。新しい車は出さない」と話した。EVトラック「セミ」やピックアップトラック「サイバートラック」を公開しているが、実際の発売は遅れている。
各社が減産するなか生産を拡大できたのは、ソフトウェアの書き換えで半導体の代替部品を確保したからだ。マスク氏は「(ソフトウェアの)コードを書き直し、必要な半導体の数を減らすことに多くの資源を費やした」と話した。
製造業の供給網に詳しいペンシルベニア大学ウォートン校のモリス・コーエン名誉教授は「シリコンバレー発祥のテスラの車はコンピューターに近く、彼ら自身でコードを書いている。ソフトウェアを書き換えて代替の半導体を使うことができた」と話す。
品質面では課題も浮かぶ。米高速道路交通安全局(NHTSA)は先月、前方トランクの不具合でボンネットが開き、運転手の視野を妨げるおそれがあるとして、テスラが計約47万台をリコール(回収・無償修理)すると発表した。同社のリコールとしては過去最大で、昨年の世界の販売台数の半分に相当する。NHTSAは昨年8月、18年以降にテスラの運転支援システム「オートパイロット」の使用中に11件の衝突事故が起きたとして、調査を始めている。(サンフランシスコ=五十嵐大介)
【視点】 「テスラを馬鹿にしていた」という自省の念を日本の自動車メーカー幹部からよく聞きます。実は日本の自動車大手7社では1963年のホンダが最後の新規参入です。車は人の命を預かる製品ですから非常に高い安全性が求められますし、3万点とも言われる部品