「練習さぼっていたから」 弱み隠さぬ福士加代子 後輩は学んだ

辻隆徳
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 東京オリンピック(五輪)マラソン代表の一山麻緒(24)が、目を輝かせながら話していたのを思い出す。

 2019年7月のことだ。

 当時、まだフルマラソンの経験が2回しかなかった彼女に、印象に残っている過去のマラソンについて聞いた。

 真っ先に挙げたのが、13年の世界選手権モスクワ大会だった。

 高校生だった一山は、テレビにかじりつくようにして、一人の選手の姿を追ったという。

 視線の先には、福士加代子がいた。

 前半から先頭グループに食らいついていった。30キロあたりでいったんは順位を落としたが、35キロ付近で再び3位に順位を上げ、銅メダルを獲得した。

 「ひとりでぽつんといたんですけど、追い上げてきた。すごいなと思った。日本にもこういう選手がいるんだって。なんか、わくわくしましたね」

 一山は高校卒業後、福士が所属するワコールへと進んだ。

 女子1万メートルで東京五輪に出場した安藤友香(27)は、福士に憧れてワコールへ移籍した。

 レースで結果が出ないとき、福士は言い訳などせず、あっけらかんと言った。

 「練習をさぼっていたから、こんな記録しか出ないよね」

 自分の弱さを隠そうとはしなかった。

 当時の安藤は不振に苦しんでいた。福士の姿を見て、肩の力が抜けた。

 「今までは強がっていたんですけど、弱い自分をどう変えていくのか、越えていくのか。『弱さも強さ』みたいなことを福士さんから学んだ」

 その背中で、言葉で、後輩たちに大きな影響を与えた福士。30日の大阪ハーフマラソンで、現役生活に別れを告げる。

 最後のレースで、見るものにどんなメッセージを残してくれるのか。この目に焼き付けたい。(辻隆徳)