「わからないまま抱えたい」 カトウシンスケ、感情を探す映画づくり

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佐藤美鈴
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 「わからないことを増やしていきたいし、どんどん迷っていきたい」。団地のベランダから落ちた植木鉢をめぐって揺れ動く人間模様を描いた映画「誰かの花」に主演するカトウシンスケ。「わかりやすさ」に抗(あらが)い、複雑な人間、感情を繊細に表現する。

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カトウシンスケさん=村上健撮影

 「誰かの花」は横浜市のミニシアター「シネマ・ジャック&ベティ」の30周年記念企画。だが、派手さや横浜っぽさはない。「監督や支配人は、お祭りというよりお客さんが見続けられるような映画を、と。皆で普遍性のある良い映画を目指しました」

 演じるのは鉄工所で働く孝秋。年老いた父(高橋長英)と母(吉行和子)が気がかりで実家の団地を訪れるが、認知症の父は数年前に交通事故で亡くなった兄と孝秋の区別がつかない。強風が吹き荒れた日、隣の部屋のベランダから植木鉢が落ち、住民の命を奪う。父は何事もなかったように部屋にいたが、窓は開き、手袋には土が……孝秋は動揺する。

 「コミュニケーションの質と量」を重視する奥田裕介監督と脚本段階から数カ月かけて語り合い、密度を高めていった。「常に複雑なものが渦巻いている。感情が一つの居どころにとどまっていることはなく、それを探し続けていた感じです」

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「誰かの花」 (C)横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画製作委員会

物語が動く絶妙なバランス

 自身も事故被害者の遺族である孝秋は、父が加害者かもしれないという疑念と罪悪感、突然家族を失った住民の心の痛みに揺れ動く。「カトウさんの顔、表情や目線、どこから撮るかによって物語自体が右にも左にも動くような絶妙なバランスがあり、存在感や危うさが面白い」(奥田監督)という繊細な演技が光る。

 孝秋の行動については「あんまりやる気はないけど、自分の引け目とか負い目みたいなものが相まって行動せざるを得ない。両親を傷つけたくないっていう最低限のラインできっと生きているというか。でもすごい大事なことだなぁと思います」。

 職場の鉄工所で、独り言のよ…

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