新型コロナウイルスの感染拡大で、抗原検査キットが不足している。メーカーは政府の増産要請前から工場の稼働時間を延ばすなどやりくりしてきたが、需要に追いついていない。感染が収まれば需要が急減する可能性があり、多額の設備投資をしにくい事情もある。
大分県宇佐市の検査薬メーカー、アドテックは今月中旬から、従来午後5時までだった工場の稼働時間を10時までに延長している。1日あたり2万5千回分の生産を目標とするが、従業員が十分確保できない日もあり、契約社員を臨時募集している。
同社はこれまでの感染拡大局面でも、在庫を増やすなどの対応をしてきた。企画開発部の森若専太さんは「今回はペースが違う。想定を超える急拡大だった」と話す。
ほかの国内メーカーも増産を急ぐ。最大手のデンカは1日あたり最大13万回分を生産する。インフルエンザ用のキットの生産設備をコロナ用に振り向けるほか、夜間のシフトを追加しているという。
2020年に国内で最初に検査キットの承認を受けた富士レビオは週48万回分をつくる。土日の工場の稼働を増やすなどして、さらなる増産を進めている。
ただ、各社とも設備の拡充など新たな投資には慎重だ。感染が収まれば在庫が積み上がり、生産能力や人員が過剰になる可能性がある。「いまから機械を発注しても納品に時間がかかる」(メーカー関係者)という事情もあるようだ。
検査キットは使用期限が現在1年間とされている。メーカー側には在庫が使えなくならないよう、延長を求める声も出ている。(渡辺淳基)

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