街をてくてくコールダックのKちゃん 人間はOKだけど鳥にびっくり

平田瑛美
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 奈良の街を歩く動物はシカだけではない。格子戸の古民家が並ぶ奈良市中心部の「ならまち」では、「コールダックのKちゃん」が愛嬌(あいきょう)を振りまいている。アヒル目線の写真とともに、観光地や店舗の情報をSNSに投稿し、街のPRに一役買っている。

 Kちゃんは「世界最小のアヒル」と言われるコールダックの女の子で、体長は約25センチ。鮮やかな黄色のくちばし、白色の羽根で覆われた体。いかにもアヒルらしいが、「たぶんKちゃんは自分のことを人間だと思っています」と飼い主で会社員の中村美範さん(34)は笑う。

 Kちゃんは2018年4月27日に、奈良市の中村さん宅で生まれた。生まれてすぐに見た動くものを追う水鳥の習性「刷り込み」によって、美範さんと妻の弥生さん(44)を親だと思っているようだ。2人のそばを離れようとせず、「人見知り」はしないが、鳥を見ると驚くという。

 中村さん夫妻と一緒にならまちを回り、「出会うといいことがある」と言われるKちゃん。ツイッター(@Call_duck_k)では敬語をまぜた独特の関西弁を使い、取材で得た珍しい情報やくすっと笑えるエピソードを紹介している。ボランティアでPR活動をするのは、ならまちで育った美範さんの地元愛からだ。

「街がもっと元気になるかもしれない」SNSに写真投稿

 自転車で通い慣れた街は、ここ数年いろんな店で彩られていったが、「奈良に住んでいる人にも知られていない場所が多い」。古い街並みだけでなく、最近は若者をターゲットにしたカフェや雑貨屋もできたが、社寺の観光の後に巡ってくれる人はほんの一部にとどまる。

 そんな印象を抱いていたら、同じならまち出身で自転車で移動しながら縁起雑貨を売る40代の男性に出会った。「街で見かけたらいいことがある」とうわさになっていた男性で、話を聞くと「お客さんが僕を探しに来ていろんな店を回ってくれれば、街を盛り上げられる」と言う。

 男性の思いに共感した美範さんは「同じようにKちゃんを探しに来る人がいれば、街がもっと元気になるかもしれない」。Kちゃんを連れて歩くだけでなく、写真をSNSに投稿するようになった。

 投稿を始めたのは20年冬、国内で新型コロナウイルスが流行し始め、飲食店が大きな影響を受けていたころだった。「少しでもお店の人に元気になってもらいたかった」と美範さん。今ではツイッターの情報を基にお店を訪れたという連絡をもらうことも増えた。「Kちゃんをきっかけに知らないお店にも行きやすくなってくれていたらうれしい」と弥生さんは話す。

 活動を始めた年にあったならまちのイベントではアンバサダーに選ばれ、現在は柳生地区の観光PRサポーターも務めるKちゃん。今後もならまちで紹介できていない店舗を巡る予定だという。美範さんは「出会う人がみんな温かくて優しいならまち。知られていない魅力をKちゃんと届けたい」。

 29、30日はギャラリー天平ならまち(奈良市樽井町)で、これまでに紹介した写真を使った個展を開く。入場無料。午前10時~午後6時。Kちゃんも会場で過ごす予定。グッズ販売で得た収益の一部は、奈良の鹿愛護会に寄付される。(平田瑛美)