オミクロン株への楽観性 日米の違いはリスクコントロールの実感?
神里達博の「月刊安心新聞+」
世界は今、「オミクロン株」拡大の最中(さなか)にある。この状況を私たちはどう理解すべきなのだろうか。
神里達博(かみさと・たつひろ)
1967年生まれ。千葉大学大学院教授。本社客員論説委員。専門は科学史、科学技術社会論。著書に「リスクの正体」など。
これまでのところ、以前の株に比べ、感染しやすく、潜伏期間が短く、重症例の割合が小さいことが分かっている。しかし感染者数が著しく増えれば、割合が小さくても重症者の実数は増加する。そのため医療資源の逼迫(ひっぱく)も懸念されているが、これは感染者数と重症化率の「かけ算」の問題である。それぞれの値の、今後の推移の見通しが得られなければ、正確な予測は難しい。
二つの数字のうち「重症化率」については、デルタ株などと比べて低いことは確実視されている。従来型との顕著な違いとしては、この株が肺では増えにくいという点がある。
その原因についても、最近、新たな仮説が提示された。新型コロナウイルスは、増殖する際に人体に元々存在するある酵素を利用する場合がある。これは肺に多く、鼻やのどなどの「上気道」には比較的少ない。
ところが、オミクロン株は変異しすぎたためか、この酵素と結合しづらくなったらしい。そのため炎症が上気道中心となり、肺炎になりにくいことから、重症化しにくく死亡率も低いようだ。
■米の死者数 同時多発テロの…