第16回若者が感じる「境界」とは 大学院生らと若手記者が話し合う

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 社会に存在するさまざまな「境界」を探り、望ましい境界の未来を模索してきた連載「ボーダー2・0」。締めくくりに、企画した若手記者3人と社会問題などに取り組む若者が、身近にある境界をテーマにオンラインで話し合った。

 佐野 連載では主に北海道の社会問題から見えてきた「境界」を取り上げた。身の回りで感じる「境界」はどんなものか。

 吉田 コロナ禍で困窮した学生への食料配布の活動を通じて、「大学生になることの境界」を感じた。一緒に活動する人の中に、学費をどうしても出せずに高卒で就職を選んだ人がいて、今も「大学生への憧れがある」と話していた。僕自身は高校生のときは何も考えずに部活や勉強をして大学生になったので、学生でいられることは、すごくぜいたくなことだと気づかされた。

 コロナ禍で「学生間の境界」も明確になった。100%仕送りだけで生活できる学生と、奨学金を借りて生活する学生では、学費に対するとらえ方や考え方も全然違って、互いの状況を理解するのは難しい。

 大嶋 僕が所属するNPOでは、昨年の衆院選に合わせて「センキョ割」というキャンペーンをした。その際、「選挙への世代間の意識の差」を痛感した。「センキョ割」は投票に行くと飲食店などで割引が受けられるサービス。メンバーが1店ずつ回って店に導入を交渉した。断られた店の人にも若者が選挙の活動をしていることを感心された。センキョ割を応援してくれた中高年の人たちは選挙への関心が高かった。

 若者の間だと、投票率を向上させようと考える人はすごく少数派。投票することへの「無力感」みたいなものすら感じる。

 川村 投票するのは、社会への問題意識があるからという人も多いはず。同性婚訴訟の取材をして、「社会を変えたい」という気持ちが、その人の行動力になっていると感じた。だから投票率を上げる一つの手として、若い人に社会問題を身近に感じてもらうことが必要ではないか。

 構 大学院に通いながら、フリージャーナリストとして難民申請者などを取材しているので、「日本人と外国人の境界」をひしひしと感じる。かれらの困難な状況を伝えても、なかなか関心を持ってもらえない。背景には、私たち日本人にとって、かれらがどんな処遇にあったとしても痛くもかゆくもない現状があり、それが無関心を呼んでいると思う。

 自分事として感じてもらうためにはどんな手段で伝えればよいのかが、自分にとって大きなテーマだ。

 平岡 境界といっても非常に多岐にわたり、今回の連載で取り上げたのは一端に過ぎない。記者と読者との間にも関心や問題意識の隔たりはあるのではないか。どのように情報を届けていけばよいと思うか。

 大嶋 ネットなどから多くの情報を得ている人にとって、情報の一つひとつを自分事として受け止めるのは難しい。特に学生は、自分の好みにカスタマイズされたネットメディアの環境にいる人が多い。自分が知らなかったことでも面白い情報をランダムに届けてくれるようなメディアがあれば変わるかもしれない。

 構 今はスマホで事件事故などの現場を撮影して発信する人たちがいる。そんな時代だからこそ、プロの記者に求められるのは、社会を見直す思考力や深掘りする能力だと思う。速報性だけでなく、質の高い報道を提供する方向に向かえば、情報を求める人も増えるのではないか。

(おわり)

話し合った若者3人と若手記者3人

 大嶋創(おおしま・そう) 北海道大学文学部哲学科2年。東京都出身。大学進学を機に札幌市へ。若者の投票率向上をめざすNPO法人「ドットジェイピー」の北海道支部で学生スタッフとして活動。昨夏は同法人が運営する議員インターンシップに参加し、国会議員の事務所で働いた。20歳

 構二葵(かまい・ふき) 早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース修士1年。北海道函館市出身。HBC北海道放送に6年間勤務し、旧優生保護法問題などを担当した。昨年退社し大学院へ。日本に暮らす外国人の問題に取り組み、YouTubeに動画を投稿している。29歳

 吉田泰輔(よしだ・たいすけ) 北海道大学大学院生。研究テーマは北海道美唄市での環境に配慮した農業の取り組み。2020年8月から道内各地で、生活難の学生などを対象にフードバンク活動をしている。昨年、札幌市に奨学金の拡充を求めてオンラインなどでの署名運動をした。25歳

 【記者】

 佐野楓(25) 入社3年目

 平岡春人(24) 入社3年目

 川村さくら(25) 入社2年目

連載ボーダー2.0(全16回)

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