行動する若者に向けられる「意識高い系」との視線 足かせ?それとも

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聞き手・寺島笑花 聞き手・杉山あかり
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 先の衆院選では、若年層の政治離れなどを何とかしようと動いた若者がいました。共感が広がる一方で「意識高い系」と同世代から浮いた存在に見られた人も。問題解決に動こうとする若者を憂鬱(ゆううつ)にさせる意識高い系という言葉との向き合い方を考えます。

NO YOUTH NO JAPAN代表 能條桃子さん(23)

 いま社会活動に関心があるという大学生の相談に乗ることがありますが、必ず「意識高い系」という言葉が出てきます。「行動したいけど、意識高いと言われたくない。どうしていましたか?」と。

 昨年の衆院選でインスタグラムを通じて若者の政治参加を呼びかける「NO YOUTH NO JAPAN(NYNJ)」の活動をしましたが、起点になったのは2017年の衆院選でした。

 SNSの運用方法を学びたくて候補者事務所でインターンすると、1票のために大人たちが全力で動いていた。文化祭みたいで楽しかったんです。でも、私の周りは「意識高いね」と冷ややかでした。

 単に「偉いね」という意味だったのかもしれないけど嫌でした。その言葉に含まれる「自分はあなたとは違う」という意識は、社会への無関心につながっていると思ったからです。その時は、無理やり相手を変えようとしなかったし笑って受け流しました。

 その2年後、若者の投票率が80%を超えるデンマークに留学しました。先生も学生も普通に支持政党について話すし、校則などのルール作りにも生徒が携わります。仕組みを作る側としての意識がありました。意識が「高い」「低い」に関係なく、政治参加が当たり前だったんです。NYNJを立ち上げたのは、そんな社会を実現するため、政治への「入り口」を作りたいと思ったからでした。

 「意識高い系」と言われて思うことがあります。自分だけが高いところにいると、見える景色は広がっても、周りを巻き込めなくなる。意識は「高く」持つのではなく、広げることが大事だと思います。興味の起点は人によって様々。正義感だけを振りかざしていたら、ギャップはどんどん大きくなる。あくまで「入り口」であることを大切にしています。

 政治に関心が無い人にアプローチするには、周りの「関心がある人」が誘うしかない。選挙だって「大学の友だち」が投票に行っていたら「自分も」と思うでしょう。一人ひとりが発信するのはハードルが高いので、さくっと、ずうずうしくなく政治の話ができるような価値観を広げたいと思っています。

 同世代の中でも、届かない層があることは実感しています。SNS中心に活動してきたからこそ、自分が見たい情報しか見えない「フィルターバブル」が私たちの周りにも起きている。インスタのフォロワーは8万5千人に増えたけれどSNSでの発信だけでは入り口になりきれないし、選挙期間だけ動いても広がらない。参院選に向けてはオフラインの活動にも取り組んでいきます。(聞き手・寺島笑花)

環境活動家 露木志奈さん(21)

 2020年の夏、入学したばかりの慶応大を休学し、環境活動家になりました。全国の中学や高校で講演活動をするのは「大学は待ってくれても気候変動は待ってくれない」からです。

 高校時代、インドネシア・バリ島に留学し、「世界一エコな学校」と言われるグリーンスクールで初めて「教科書では詳しく学べない」気候変動問題を知りました。授業の一環で先進国から集められたごみの山を見て、私も加担していると気づきました。校舎は竹でできていて電力も自給。同級生でポリ袋やペットボトルを使っている人をほとんど見たことはなく、私も水筒やエコバッグを持ち歩くことが当たり前になりました。

 環境問題に関心があっても、学生が知る機会は限られます。多様な人がいる学校という場にこだわるのは、接点のない人に知ってもらいたいからです。希望者だけが参加する形の講演はあまり行いません。

 どんな活動にも批判は付きものです。私に意見があるように他の人にも違った意見がある。「ビジネスだ」とか「見せかけだけ」というコメントが付くこともあります。それぞれ異なった視点を持っているからこそ、世の中がよくなっていくのだと思います。小さな成功体験を重ねて自信が付いたからか、批判はあまり気になりません。むしろ、他の人と同じことをしている方が不安になります。

 環境問題を「知った上で興味がない」人まで変えたいとは思わない。伝わらないことに落胆したり、憤ったりしていたら疲れちゃうから。講演でも100人中1~2人呼応してくれればいいと思っています。

 気候変動は調べれば調べるほど、本当に間に合うのか不安になる。地球温暖化は今も進んでいて、講演活動をしてもすぐに目に見える効果があるわけでもない。でも、希望はあると思っています。その方が行動しやすいからです。

 気候変動は誰もが必ず加担しています。それは誰もが解決策を持てるということです。電力会社を選ぶ、食べるものを選ぶ。私たちの「選択」が未来を変えます。めざすのは「環境活動家がいない未来」です。実現するための方法は先生になることでもいいし、アイドルでも政治家でもユーチューバーでもいい。時代に合わせて手段を変えればいいと思っています。

 この先、何をするかは自分でも分かりませんが、これからの世代を生きていく同年代の「変わるきっかけ」を作れるとしたら、ワクワクします。もちろん「未来のため」ではあるけれど、自分の活動が楽しいからこそ続けられる。結局は行動するのは「自分のため」だと思います。(聞き手・寺島笑花)

■春から教員になる 別木萌果…

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    林尚行
    (朝日新聞政治部長=政治、経済、政策)
    2022年1月31日8時53分 投稿
    【視点】

    小熊さん、能條さんのコメントを拝読しました。新聞社の中にあってコンテンツを作り出す側として、「若者特別枠」「女子ども特別枠」について、そうした視点で受け止められることをしっかりと心に刻みつつ、日々のコンテンツを作っていきたいと思いました。せ

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    能條桃子
    (NoYouthNoJapan代表)
    2022年1月30日23時27分 投稿
    【視点】

    この記事に登場している一人として、小熊さんの「このように「若者特別枠」で記事にされることに対して、ここで取り上げられた人たちはどう感じているのだろうか。」ということについて、感じていることを書いてみようと思います。 1点目、なぜ「若者