韓国外交省「強い遺憾の意、中断を」 佐渡金山の世界遺産推薦に対し

ソウル=鈴木拓也
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 岸田文雄首相が佐渡金山遺跡(新潟県佐渡市)の世界文化遺産登録をユネスコに推薦する考えを表明したことに対し、韓国外交省の報道官は28日夜、「強い遺憾の意を表明し、このような試みを中断することを厳重に求める」とのコメントを出した。

 日米韓は北朝鮮への対応を話し合うために、2月中旬にハワイで外相会談を開く方向で調整している。米国は開催を強く求めているが、韓国政府関係者は「状況的に厳しくなるかもしれない」と話す。

 佐渡金山遺跡について韓国政府は「強制労働が行われた場所という十分な説明がないまま世界遺産に登録されないように、ユネスコなど国際社会とともに断固として対応する」として、登録を阻止する構えだ。韓国政府と韓国企業が元徴用工や遺族らを支援するために2014年に設けた「日帝強制動員被害者支援財団」は、佐渡鉱山に動員された朝鮮半島出身者が最大で約1200人いたと主張する。

 韓国政府は、15年に世界文化遺産に登録された長崎県の端島(軍艦島)などからなる「明治日本の産業革命遺産」をめぐる日本側の対応に強い不満を抱いてきた。日本政府は登録の際に「意思に反して連れてこられ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者らがいたことなどを理解できるような措置を講じる」と明言したが、韓国政府は「日本は自ら約束した後続措置をろくに履行していない」と捉えている。

 韓国外交省報道官は28日のコメントで「日本政府が自ら約束した後続措置を忠実に履行することが先だ」と改めて求めた。

 韓国は3月9日に大統領選を控えている。今のところ日韓関係や対日政策は大きな争点になっていないものの、岸田政権の判断に対する反発が強まれば、与野党の候補者らが「反日カード」として利用する可能性もある。

 与党候補の李在明(イジェミョン)前京畿道知事は28日夜、「強制動員被害者に謝罪すらしない日本が、強制徴用の現場を世界文化遺産に推薦しようとするのは深刻な歴史否定であり、被害者への侮辱だ。侵略と強制動員の歴史が世界遺産に美化されることは許されない」とのコメントをフェイスブックに投稿した。世論の支持を狙って候補者らが競うように日本への批判合戦を繰り広げれば、日韓関係がさらに悪化する可能性が高まる。

 元徴用工問題をめぐっては韓国大法院(最高裁)が日本製鉄(旧新日鉄住金)や三菱重工業に元徴用工への賠償を命じた判決を受けて、韓国内にある両社の資産を売却して原告に対する賠償にあてる「現金化」に向けた手続きが進む。日韓間に新たな懸念材料が加われば、5月に文在寅(ムンジェイン)政権に代わって発足する新政権も対日政策では、国内世論に配慮しながら難しいかじ取りを迫られそうだ。(ソウル=鈴木拓也)