会社の後継ぎも働き手もいない 第三者への事業譲渡という選択肢

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高橋豪、武井宏之
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 戦後のベビーブーム世代の高齢化が進み、山口県内でも働き手の世代の減少が著しい。先行きが見通せない中、社会を支える産業の維持は大きな課題だ。後継者がいない中小企業の経営者には、第三者への事業譲渡を選ぶ人もいる。

 山口市朝田の幹線道路沿い、オレンジの壁の工場が目を引く。昨年7月に設立された自動車整備会社「二光自動車工業」だ。工場はトヨタ車の販売店だった建物を改修した。

 「自分は運が良かった」

 新会社の設立に同市の吉崎祐美(ひろよし)さん(66)は胸をなで下ろした。約1・5キロ離れた場所で別の自動車整備会社を経営していたが、その社名と、約20人の従業員のほとんどが新会社に引き継がれたからだ。

 旧二光自動車工業は1961年の創業で、吉崎さんの父親やおじが支えてきた。吉崎さんは約30年前に社長に就き、主にリース車のメンテナンスを手がけてきた。自前のデータベースをつくって作業を効率化するなどして取引先を増やし、会社を成長させた。

自分や弟の子どもは県外に就職

 しかし、自分や弟の子どもは県外に就職し、後継ぎがいなかった。工場は電気設備の老朽化などで改修が必要だったが、その費用は約1億円。数年前からは、従業員を募集しても採用につながらなくなった。人口減少で市場規模が縮む中、新たな投資の決断はできなかった。

 廃業も考えたが、「親から継いだ会社を自分の代で終わらせたくない」。そんな時、知人に紹介されたのが宇部市で同じ自動車整備業を営む俵美将(よしまさ)さん(68)だった。

 俵さんの会社は、一般客の車検や新車・中古車販売を手がけていたため、営業のノウハウが違う新会社を持つことによる相乗効果に期待し、事業を引き継ぐことを決めた。

 空き店舗を改修した現在の社屋に移転したが、「地場でやってきた看板と信用がある」と、社名はそのまま残した。新社屋の設備投資など、全体で約7千万円の資金は、日本政策金融公庫の融資を受けるなどしてまかなった。

 戦後のベビーブーム世代を中心に高齢化が進み、県内の働き手世代は激減。2020年の国勢調査によると、県内の15~64歳の「生産年齢人口」は72万3588人で、10年前から13万人以上減った。山口県は生産年齢人口の割合(53・9%)が全国の都道府県で4番目に低く、逆に高齢化率は3番目に高い。その影響は県内の中小企業にも及び、後継者不在は課題の一つだ。

7割が、後継者いないか決まっていない

 帝国データバンクが昨年発表…

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