絶好調の福島千里は言った 「あと一本」 許した恩師の悔恨

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酒瀬川亮介
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 中村宏之さん(76)は、あの衝撃をいまでも覚えている。

 北海道・帯広南商高の体育館で行われた練習会だった。一人だけ、スイスイと走る子がいた。

 「あれ、だれ?」

 体育館のフロアの上を走っているのに、音がしない。静かにスーッと前に進む。重心移動が滑らかで、何も力を入れないような動き。何人ものトップスプリンターを育てた中村さんにさえ「天才だ」と思わせた。

 それが、当時中学3年だった福島千里との出会いだった。

 高校を卒業した福島は2007年、中村さんが指導する北海道ハイテクACに加わった。チームには、全国高校総体チャンピオンで世界選手権代表にもなった北風沙織がいた。

 自分よりも速い北風と一緒に走ることで、神経系の素早い反応、動きの速さが引き出された。

 08年、日本タイ記録の11秒36をマーク。北京五輪の参加標準記録Aには届かなかったが、思いがけず代表に選ばれた。20歳で日本女子として56年ぶりに五輪の100メートルに出場した。

 結果は11秒74で予選落ち。ショックは大きかった。

 「まったく自分の力が通用し…

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