「ブルー」も「グリーン」も…脱炭素時代へ、湾岸産油国の水素戦略

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アブダビ=伊藤喜之
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 「脱炭素」へ世界各国が一斉にかじを切るなかで、石油や天然ガスといった化石燃料を経済の柱にしてきた湾岸アラブの産油国も、対応を迫られている。この地域の国々がいまこぞって着目するのが「水素」。次世代エネルギー源として有望視される水素生産の取り組みが各地で進む。(アブダビ=伊藤喜之)

いとう・よしゆき 1984年生まれ。ドバイ支局長。湾岸諸国やイラクなどを担当。大学時代は農業経済学ゼミに所属。

 ジリリリリィィィン。港近くの工場地帯で、鐘を小刻みに打ち続けるような音が響く。アラブ首長国連邦(UAE)首都アブダビ。二酸化炭素(CO2)を圧縮して液化する機械の音だ。

 「このCO2は、天然ガスから水素を分離する過程で発生したものです」

 青色の作業着を着た国営石油公社ADNOC(アドノック)の現場責任者が説明してくれた。既存のCO2圧縮プラントに昨年9月、天然ガス由来のCO2を回収する新しいユニットを取り付けた。

 縦横にパイプラインが張り巡らされている。ここでCO2は液化され、アドノックが操業する43キロ先にある油田までパイプラインで運ばれる。地中の油層に封じ込め、大気への放出を防ぐためだ。さらに、油田に残留する石油がCO2の圧力のおかげでくみ出しやすくなる。こうして、天然ガスはCO2が回収・貯蔵された水素となる。

 水素は、燃焼時にCO2を排出しないため「究極のクリーンエネルギー」とも呼ばれる。ガラスや金属、プラスチックなど様々な工業製品の製造過程で不可欠な添加剤などとして使われるほか、燃料電池車宇宙ロケット、航空機や船の燃料などとしても欠かせない燃料になっている。

 水素は製造法に応じて、さまざまな「色」をつけた名称で呼ばれる。現在世界に流通する水素の99%は「グレー水素」だ。天然ガスや石炭などからつくられるが、過程でCO2を大気に放出するため、環境への負荷が大きい。

 脱炭素時代に有力視されるの…

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