「このままでいいのかな?」 50代からの転身は「人生の充実」重視

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田渕紫織 佐々波幸子 高橋美佐子
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 転職や起業など、50代になって、これまでの生き方を見つめ直す女性の情報発信がネットや書籍の刊行などで相次いでいます。仕事や家庭、友人づきあい――。懸命に走り続けてきた50代は、ふと一息つきたくなる時期なのかもしれません。新たな一歩を踏み出した2人に、話を聞きました。

Aging Gracefully わたしらしく輝く

 昭和に育ち、男女の雇用機会均等の号砲で平成を走ってきた。そして50歳。過去も未来も見渡せる年頃を迎えたあなたや私をAging Gracefullyエイジンググレイスフリー(AG)世代と名付けました。年を重ねてもっと自由に。

心が騒いだときこそが転機 会社員に終止符、院生に 河野純子さん(58)

 53歳。さあ、今日が会社員人生の最後の日。大手商社本社ビルのエレベーターを降りて、1歩外へ出た。その時の爽快感を、河野純子さん(58)は今でも忘れない。ビルを出ると、2人の女友達が待っていた。「お疲れ!」と花束を渡してくれた。次にやることは決めずに辞めた。

 「このままでいいのかな?」。会社員人生の中で、そんな風に思ったことは何度もあった。

 一番最初は20代後半。リクルートで住宅情報誌の編集者をしていた。平日も土日も、取材に走り回った。「早く結婚をして、子どもを産んだほうがいいのかな」。不安で、夜中にガバッと起きてしまうこともあった。雑誌「とらばーゆ」の編集長を務めていた40歳のころには、体力の衰えを感じ始め、先の人生を立ち止まって考えた。

 夫と出会い、結婚した直後の44歳のとき、商社に転職した。48歳から手がけた新規事業は、英語で学ぶ幼児園や学童保育の事業。面白かった。

 事業は計画通りに進み、これからさらに全国に広げていこうというころ。会社の方針で、事業を売却することになった。粘ったが、方針は覆らない。「雇われている限り、こういうことはあるんだな」。しみじみ思い知った。

 ちょうどその時、ベストセラーになっていた「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」を読んだ。人生100年あるなら今は折り返し。「まだまだたっぷり時間があると、気づいてしまいました」

 だからこそ、いつ新しいことを始めてもいい。半年悩み、辞表を出した。

 3カ月後、前からしたかった語学留学に向かった。帰国後、2018年に入った大学院では、50代前後に全く違う分野に飛び込んだ9人の「先輩」にじっくりインタビューして修士論文にまとめた。

 現在はシニアのひとり起業の研究に取り組む。さらにリクルート時代の元上司が立ち上げた人材サービス会社「ライフシフト・ジャパン」にも関わり、ワークショップなどを手がける。

 将来に迷う「後輩」たちには、まずは気になる人に会いに行ったり、新しい学びを始めたりしてみることを勧める。「やってみて『やっぱり違った』と思ったら、また探し直せばいい。時間はたっぷりあるんですから」

 転身に不安はなかったのか? 河野さんの回答は明快だ。「心が騒いだときが第一歩。自分の意思で自分の時間をコントロールできる快感は、代えがたいです」(田渕紫織)

お金と将来の方向性、整理を 社長辞め、洋品店を起業 井形慶子さん(62)

 井形慶子さん(62)が28歳で立ち上げた出版社の社長を辞めたのは55歳のときだ。手がけてきた英国情報誌の編集長は続けつつ、年間34日だけ開く洋品店を始めた。約30年続けた社長業から、長年の夢への転換。経緯や注意点を聞いた。

 出版社の規模を縮小すると決めたのは、社長を辞する3年余り前。当時、3カ所にオフィスを構えるなど、事業は好調だったが、広々としたオフィスを見ながら「もっと年をとったとき、この会社を畳めるだろうか」と不安に襲われたことがきっかけだった。

 倉庫を解約し、段階を踏んでオフィスは以前の4分の1ほどのフロアに移転した。仕事の柱である英国情報誌は月刊から隔月にした。20人超いた社員にも働き方を問いかけると、井形さん同様にやりたかったことを始めつつ、パートなどの形で働く人も現れた。「会社のダウンサイジングやキャリアのシフトチェンジは仕事がうまく回っている時こそお勧めです。自分の意思で決められるから」と振り返る。

 毎日深夜まで会社で過ごしていた自身の働き方も変えた。お手本となったのは、長年取材してきた英国の人たちの人生観。50~60代を「ゴールデンエイジ」と呼び、50歳前後でセミリタイアして暮らしと仕事のバランスを上手にとる人が多かった。娘の子育てを手伝い、親の介護に備えたい、という気持ちもあった。

 社長の座を降り、ゆとりが生まれると、「これなら60代に入っても働き続けられると意欲が戻ってきた」。雑誌の取材でほれ込んだ英国の工房の服や雑貨を扱う店を開くという長年の夢を実行に移し、56歳で31平方メートルの店を東京・吉祥寺で開いた。

 50代での挑戦、大事な点は…

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