轟音の空と飲めない水 平穏とはほど遠い「安全保障」下の沖縄の日常

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沖縄季評 山本章子・琉球大准教授

 昨年8月に子どもが生まれた。入院した沖縄県浦添市の産婦人科は米海兵隊の輸送機オスプレイが毎夕、訓練を終えて宜野湾市普天間飛行場に帰る通り道にあり、出産直後もいつものように低空飛行するオスプレイの重低音が鳴り響いていた。

 日米地位協定の運用を話し合う日米合同委員会の合意で、普天間飛行場を出入りする米軍機は病院や大学の上を避けて飛ぶことになっているが、努力義務のため、まったく守られていない。勤務先の琉球大学の上も毎日、米軍機が飛び、講義の声をかき消す。コロナ感染対策で教室の窓を開けているので、防ぎようがない。生後すぐ騒音に慣れてしまったわが子はオスプレイの音くらいでは起きない。お散歩中、頭上をオスプレイが何機もかすめるように飛んでも身動きひとつしない。

 やまもと・あきこ 1979年生まれ。琉球大学准教授。専攻は国際政治史。「日米地位協定」で石橋湛山賞を受賞した。

 子どもが生まれたひと月後、岩国飛行場(山口県)所属のF35Bステルス戦闘機が訓練で普天間飛行場に飛来。100デシベル超の騒音に、宜野湾市役所には市民から苦情の電話が寄せられた。電車が通るときのガード下、もしくは地下鉄駅構内にいる程度の騒音で「きわめてうるさい」レベルだ。家の中にいてもゴーゴーゴーゴーというF35の異質な音はすぐ分かる。わが子は屋内では反応しないが、散歩中にF35が真上を飛んだときはピクッと震え、抱く私の腕の中に隠れるように身をちぢめた。

 こんな環境が子どもの成長によいわけはない。だが米軍基地の面積は沖縄本島の15%を占めており、米軍機は日々の訓練で島の上を縦横無尽に飛び回っている。島のどこにいても米軍機の音を聞かない日はない。

 子どもの誕生は、米軍が、普天間飛行場の地下貯水槽にたまった有機フッ素化合物「PFAS」(PFOSなどの総称)を含む汚染水を薄めて処理し、公共下水道に放出すると日本政府に通告していた時期だった。PFASは消火剤の泡立ちをよくするために使われるが、自然環境中では極めて分解されにくい。人の体内に入ると、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるという。

 国内の調査では、妊婦の血液…

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