「人権状況は悪化」なのに…ウイグル族の男性、五輪開催への「疑問」
4日に開幕する北京冬季五輪。開催国の中国では新疆ウイグル自治区の少数民族に対する人権問題が指摘される中、日本でこの問題を訴えてきたウイグル族の男性は複雑な思いでこの日を迎えている。
新疆ウイグル自治区出身のサウト・モハメドさん(44)。自治区の中心都市・ウルムチで2009年7月、ウイグル族のデモ隊と治安部隊が衝突した事件に遭遇した。当局発表で、197人が犠牲になったとされる。
公務員として働き、衣食住に不足のない生活を送っていたが、この事件を受けて「このままではウイグル族の将来はない」と感じるようになった。
16年に留学生として来日すると、約1年後には現地に残る家族と連絡がつかなくなった。
最後に連絡をとった家族は7歳上の兄。大学の春休みに里帰りしようか相談したが、兄は「こちらはとても寒い。心も寒くなる。帰って来ない方がいい」。含みのある言い方に、悪い状況に置かれていることをくみ取った。
中国での五輪開催をめぐる賛否について、「アスリートのことを考えれば、スポーツに政治を持ち込むべきではない」と思う。
一方で、人権の尊重をうたう五輪憲章を考えれば「疑問がある」。自治区では、「再教育施設」へのウイグル族住民の収容などに関連し、米国が「ジェノサイド(集団殺害)」と批判し、人権状況は極端に悪化していると考えるからだ。
モハメドさんは五輪開幕直前の4日午前、東京都港区の中国大使館前であった五輪開催に抗議する集会にも参加した。
「各国が五輪に協力すれば、中国共産党は外国の批判を聞かなくてもいいという誤ったメッセージを送ることになるのではないか」と懸念している。(畑宗太郎)
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