自然破壊に苦悩の投書「お笑いください」 尾瀬に死すから50年
張春穎
【群馬】自然に心を寄せる各地のみなさん、お笑いください――。自然破壊への非力さを自嘲する投書を出した男性は、尾瀬を切り裂く車道工事の中止を勝ち取った年の冬に、36歳という若さで遭難死した。「生涯に悔いはなかった」という言葉を残して。尾瀬はあの冬から50年を迎えている。
尾瀬が深い雪で閉ざされた昨年12月1日。入山口の一つ・大清水(群馬県片品村)に長蔵(ちょうぞう)小屋の関係者が集まった。長蔵小屋は1890(明治23)年に尾瀬沼畔の沼尻に開業し、1915(大正4)年にいまの東岸に移った最古の山小屋で、かつてと違って小屋で冬を越す者はいない。
その3代目・平野長靖(ちょうせい)さんは50年前の1971(昭和46)年、豪雪の尾瀬山中で力尽きた。急死後、幼子3人を義母らに預けて、山に入って長蔵小屋を仕切った妻の紀子さん(80)は、心の中でつぶやいた。
「みんなのおかげで、50年がたちました。もう私は役目を降りますよ」
大清水から尾瀬沼を経て福島…
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