羽生のフリー「天と地と」作曲者の冨田勲 記者がみた「夢を見る力」

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編集委員・吉田純子
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 フィギュアスケートの男子フリー、羽生結弦選手が選んだ楽曲は冨田勲さん(1932~2016)作曲の「天と地と」でした。自らの中に育てたイメージを音にすることに対して、決して妥協しなかった冨田さん。無謀とも言われた数々のプロジェクトに挑み、「夢を見る力」で限界を突破してきたその歩みは、羽生選手にどこか重なります。晩年の冨田さんとしばしば酌み交わした記者が、「天と地と」が生まれた背景と、その生涯の志を振り返ります。

ルーツは北京

 スポーツ観戦をほとんどしない私だが、北京五輪フィギュアスケートだけは心待ちにしてきた。想像力を強く喚起し、宇宙をも体感させる冨田サウンドが、羽生選手の舞とともに世界の人々の胸に届けられることがとてもうれしい。

 冨田さんの音楽家としてのルーツは、実は北京にある。生まれは東京だが、父親の仕事の関係で、幼少期を北京で過ごしたのだ。

 中国語がわからず、友達もいない。孤独だった冨田少年はある日、父に連れて行かれた天壇公園で、遠くの音がすぐ近くできこえる回音壁の不思議に心を奪われる。この時の感動が、のちに4.1chサラウンドによる豊饒(ほうじょう)な立体音響を開発するきっかけになったと冨田さんはのちに語っている。

 その後、回音壁のみならず、街中のいろんな音に耳を澄ますことが、幼い冨田さんにとっての日常となってゆく。鳥の声、雑踏の足音、吹き渡る風。自然や生活の音のすべてが冨田さんにとっては音楽だったのだ。

非常階段で作った音

 「月の光」「惑星」「展覧会の絵」などの壮大なアレンジ、「リボンの騎士」「ジャングル大帝」などの親しみやすいアニメ音楽、軽妙なNHK「きょうの料理」、映画「たそがれ清兵衛」の飄然(ひょうぜん)と漂うテーマ曲。冨田さんの作風の幅は限りなく広いが、共通しているのはサウンドへのこだわりだ。

 心の中で育てた音を、思い通…

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