偉人の名言より刺さった言葉 母が私に言った「心の三角定規」とは
「罪悪感」。大阪府の高校2年生、松尾美月さんは、この感情を一番大切にしている。
幼い頃、大切にしていた人形に不機嫌な気持ちをぶつけ、壊してしまった。しばらくへそを曲げていたが、気持ちが落ち着くと「せっかくお母さんが買ってくれたのに、壊しちゃった」。急に心臓のあたりがチクチクと痛んだ。
初めて経験する痛みを母に訴えた。
母は「悪いことをすると、心の中の三角定規の角が心を突き刺す。でも繰り返すと、角が丸くなり痛みを感じなくなるから、その痛みを大切にして」と話した。当時は言葉の半分くらいしか理解できなかったけれど、少し心が救われた気がした。
その後も友だちに悪口を言ってしまったときや、うそをついてしまったときに同じような痛みを感じた。
そのたびに母は「心の?」と問いかけ、松尾さんは「三角定規」と答える。罪悪感を忘れないための合言葉になった。
この言葉を繰り返すことで、「心がチクチクするのはつらい。慣れてはいけない」と学んだ。
中高生が心に響いた言葉と、そのエピソードを作文にする「私の折々のことばコンテスト」への応募が、高校の課題として出された。
ネットで偉人の名言集も調べたが、母の「心の三角定規」以上に心に刺さるものはなかったという。「大好きな母が言ってくれた言葉だから重みがあったんだと思う」
今は、罪悪感につながりやすい怒りやイライラは、表に出さないように気をつけている。
所属する弓道部のミーティングで、受け入れられない意見を言われても、いったんは落ち着いて聞く。「結果的にそうした方が良かったと思えることが多い」
これからも「心の三角定規」を大切にしていきたい。
■「私の折々のことばコンテス…