コロナ禍で通訳ガイドの苦境が続いている。訪日客相手の仕事のため、政府の観光支援策「Go To トラベル」で国内旅行需要が戻った時も、仕事は増えなかったという。オミクロン株の感染拡大で先行きが見通せないなか、現場はどんな葛藤を抱え、挑戦を続けているのか。ガイドの現状を追った。(箱谷真司)
「訪日客が戻ればすぐに通訳ガイドとして働きたい。オミクロン株の感染拡大はいずれ収まると思うが、楽観はしていない」
コロナで通訳ガイドの仕事がなくなった北関東に住む男性(38)は、先行きへの不安を隠さない。今は近くのスーパーマーケットで週5日ほど、食品などの品出しや特売品コーナーの設置のアルバイトで生計を立てている。
高校卒業後に渡米し、現地の大学を卒業。2008年のリーマン・ショックの影響で就職先は見つからず、英語力を生かせる通訳ガイドをめざした。2012年に、国家資格である全国通訳案内士の試験に合格。人材派遣会社と契約し、通訳ガイドとして働き始めた。
政府が「観光立国」を掲げ、訪日客は右肩上がりで仕事は順調に増えた。当初はカラオケ店でアルバイトをしながら生活費を稼いでいたが、14年からは通訳ガイド専業に。毎年、米国やオーストラリアからの約4千人の訪日客を富士山など全国各地へ案内し、年収は600万円を超えた。
「ありがとう」「また来る時はお願い」。感謝を直接伝えてもらえるのが何よりの魅力だった。「日本を好きになって帰ってもらう仕事なので、やりがいは大きかった」
しかし、コロナで状況は一変…
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