憧れのニッポン、もう待てない 留学・就職を足止めされ「失恋した」

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ニューヨーク=藤原学思、シンガポール=西村宏治、翁長忠雄=バンコク、菊地直己、笹山大志、河崎優子
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 憧れてきた日本への留学や就業を国境が阻み続けている。先進国で最も厳しい新型コロナの水際対策によって、外国人の新規入国が原則停止されているためだ。緩和の時期をめぐり、政府内でも意見が割れており、先行きは見通せない。長引く「鎖国」に対し、「日本の損失だ」との声も漏れる。

 米フロリダ州に暮らすビクター・ペレズさん(19)は最近、引っ越しの作業で忙しい。3月6日、人生で初めて、米国を離れる。

 留学のために韓国へ向かう。まずは語学学校へ。その後は大学へ。やりたいことがたくさんある。

 本当は、日本に行きたかった。小さい頃から、日本こそが憧れの地だった。

 でも、もう待てない。日本語の教科書4冊を捨てるつもりはない。でも、韓国に持っていくつもりも、ない。「ライフ・マスト・ゴー・オン」。人生を、前に進めなければならない。

 日本を好きになったきっかけは父親だった。空手の道場に連れていかれたり、黒澤明映画七人の侍」を見させられたり。そのうちに、日本発のアニメやゲームにも関心を持った。

 「必ず、日本に」。2020年5月に高校を卒業すると、留学資金をためるために、スーパーでアルバイトに励んだ。時給は12ドル(約1400円)ほど。1週間に40時間、フルタイムで働いた。

 21年2月には、留学に必要な「在留資格認定証明書」を受け取る。東京の住まいを決め、年間7千ドルの日本語学校の授業料を払い、航空券も予約した。

 だが、国境が開かない。

 日本政府は昨年11月、外国人留学生のごく一部について、入国規制を解除した。だが、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が世界を襲う。

 それを受けて11月末、外国人の原則入国禁止が発表された。規制緩和はわずか3週間で終わった。そしてペレズさんは、日本行きをあきらめ、在留資格認定証明書を日本の学校に送り返した。

 ショックだったのは、世論調査で大半の日本人が、政府の対応を「評価する」と回答したというニュースだった。

 「日本を嫌いになったとは言わない。でも、否定的な見方をしてしまう。ワクチンを打ち、もちろん隔離もするつもりだった。国籍で扱いを分けることが、合理的とは思えない」

 韓国からは歓迎された。「まるで自分の国に行くかのように」。語学も文化も、たくさん学ぼう。いまは解放された気分でいる。

 2年半前からペレズさんは、語学学習を目的とした交流アプリで、日本人の英語話者と会話を重ねていた。文化とともに、日本に暮らす人びとにも興味を持つようになっていた。

 でも、いまはもう、連絡をほとんど取っていない。 マレーシアの首都クアラルンプールに住むタン・チェンシオンさん(25)は日本企業への就職が内定したものの、入国できずに働けないままだ。

日本企業に内定「あきらめきれない」

 いまはライドシェアサービスの運転手として過ごす日々を送っている。「経済的な損失も考えれば、国境閉鎖は日本のみなさんのためにもならないと思う。早く開いてほしい」

 幼い頃から日本の家電や車…

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    佐橋亮
    (東京大学東洋文化研究所准教授)
    2022年2月12日15時28分 投稿
    【視点】

    感染対策だから当然ではないかと思われるかもしれません。しかしここでの問題の本質は、なぜ日本国籍者とそれ以外(新規のビザ取得者)を区別しているのか、ということなのです。コロナになってからも、多くの日本国籍者が海外に留学していますが、その人々は